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捨てコンとは?「捨て」なのに重要な3つの目的と必要性を解説

「捨てコン」という言葉を耳にしたことはありませんか?「捨ててしまうコンクリートなのかな?」そんな疑問を感じるかもしれません。

捨てコンは、その名前とは裏腹に、建物の土台となる「基礎」を、設計図通りに正確かつ強固に作るために欠かせない、非常に重要な工程です。

この記事では、建設業界の専門知識がない方にもご理解いただけるよう、捨てコンの役割や必要性、万が一「捨てコン」がなかった場合のリスクについて解説します。

この記事を読んでわかること
  • 捨てコンクリートの基本的な意味と「均しコン」との違い
  • 「捨て」と呼ばれるコンクリートが持つ3つの重要な役割
  • 捨てコンが法律上の義務か、省略された場合のリスク

1.捨てコンとは?基礎工事の「土台の土台」

捨てコンとは?基礎工事の「土台の土台」

捨てコンとは、捨てコンクリートの略です。

Point

建物の主要な基礎(構造体)を作る前に、地面(砕石)の上へ水平に打設される、準備のためのコンクリートのこと

家を建てる際、まず地面を掘り、基礎の底となる部分に砕石を敷き詰めて固めます。捨てコンは、その固めた砕石の上に薄く流し込むコンクリートです。

これは、これから作る本番の基礎(鉄筋コンクリート)を正確に作るための「作業台」や「下敷き」のようなもの、いわば土台の土台だとイメージすると分かりやすいでしょう。

捨てコン自体が建物の重さを直接支えるわけではないため、「構造体」としては扱われません。

これが「捨て」と呼ばれる理由の一つです。

参考|鹿島:捨てコンクリートの役割

「捨てコン」と「均しコンクリート」の違い

捨てコンと非常によく似た言葉に「均しならしコンクリート」があります。

これは、地面を平らに「均す」ために使われるコンクリートのことで、多くの場合、捨てコンとほぼ同じ意味です。

どちらも、その後の作業をしやすくするために地面を平らに整える、という役割は共通していえるでしょう。

ただし、厳密には、捨てコンには後述する「墨出し」という重要な目的が含まれますが、「均しコンクリート」は単に「平らにする」というニュアンスが強い場合があります。

2.捨てコンの3つの重要な目的・役割

捨てコンの3つの目的

目的1 基礎の正確な位置を記す「墨出し」のため

目的2 鉄筋や型枠を安定させる「下地」のため

目的3 建物の正確な高さを決める「基準」のため

「捨て」という名前にもかかわらず、捨てコンはなぜ重要なのでしょうか。

それには、大きく分けて3つの大切な目的・役割があるからです。

目的1:基礎の正確な位置を記す「墨出し」のため

捨てコンの最も重要な役割が、この「墨出し(すみだし)」です。

墨出しとは
設計図に描かれた基礎の位置や壁の中心線などを、実際の地面(捨てコンの上)に原寸大で書き写す作業のこと

もし地面が凸凹の砂利のままだと、正確な線を引くことはできません。

捨てコンという平らなキャンバスを用意することで、設計図通りの正確な位置に基礎を作ることが可能になります。

建物のすべての基準となる線を引く、非常に精密さが求められる作業です。

参考|
国土交通省:墨出し用開口部について(別紙1)
トプコン:あらゆる工事に必要な「墨出し」とは?

目的2:鉄筋や型枠を安定させる「下地」のため

基礎は、コンクリートの中に鉄筋を組んで強度を高めます

もし捨てコンがないと、鉄筋を地面の土や砕石の上に直接置くことになります。これでは鉄筋が安定せず、正確な位置に固定できません。

また、鉄筋に土が付着すると、コンクリートとの付着が悪くなり、基礎の強度が低下する恐れもあります。

Information

捨てコンは、鉄筋や、コンクリートを流し込むための型枠(かたわく)を、設計図通りの正しい位置にしっかりと固定・安定させるための「下地」です。

目的3:建物の正確な高さを決める「基準」のため

捨てコンは、基礎の「高さ」を決めるための基準(レベル)を出す役割も担います。

地面のままでは正確な水平が出せませんが、捨てコンを打つことで水平な面を作り、そこを基準(±0)として、基礎の正確な高さを設定していくことができます

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3.捨てコンは省略できる?法律上の義務と品質上の必要性

捨てコンは省略できる?法律上の義務と品質上の必要性

「捨てコンは、建物の重さを支える構造体ではない」と聞くと、「それなら省略してもいいのでは?」と思われるかもしれません。

ここで、法律上の義務と品質上の必要性について解説します。

結論:法律上の義務ではないが、品質確保には不可欠

結論から言うと、捨てコンの打設は、建築基準法などで定められた法律上の義務ではありません。

法律で決められていないため、コスト削減などの理由で捨てコンを省略するケースも、残念ながら存在します。

しかし、捨てコンは基礎工事の精度を高めるためにとても重要です。

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捨てコンを省略した場合の具体的なリスク

もし捨てコンを省略して基礎工事を行うと、以下のようなリスクが発生する可能性が高まります。

礎の位置や寸法が不正確になる

地面に直接「墨出し」はできないため、基礎の位置が設計図からずれてしまう恐れがあります。

基礎の強度が低下する

鉄筋が土や砕石に触れ、コンクリートのかぶり厚(鉄筋を覆うコンクリートの厚さ)が不足したり、鉄筋が錆びやすくなったりする可能性があります。

基礎が歪む・沈む

型枠が不安定になり、コンクリートを流し込んだ圧力で歪んでしまうことがあります。

これらの不具合は、建物の耐震性や耐久性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

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4.捨てコンに関する基礎知識

捨てコンに関する基礎知識

参考までに、捨てコンに関する一般的な技術仕様をご紹介します。

一般的な厚さと強度は?

捨てコンの厚さは、一般的に50mm(5cm)程度です。

これは作業員が乗ったり、型枠を立てたりするのに最低限必要な厚さになります。

また、強度についても、建物を支える構造体ではないため、本番の基礎コンクリート(一般的に21〜24N/mm2程度)ほどの高い強度は必要とされず、18N/mm2程度のコンクリートが使用されることが一般的です。

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材料と施工の手順

材料は、通常のコンクリートと同様にセメント、砂、砂利、水を混ぜたものですが、強度の指定が低い分、セメントの量が少ない配合です。

また、捨てコンは建物の構造体ではないため、鉄筋を入れない「無筋むきんコンクリート」が使用されます。

施工は、「地業(砕石を敷いて固める)」が完了した後、コンクリートミキサー車で運ばれた生コンクリートを流し込み、トンボやコテなどを使って平らに均していきます。

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5.良い基礎工事は「捨てコン」の仕上がりでわかる

「捨てコンクリート」は、「捨て」という名前とは裏腹に、建物の基礎の精度と品質を決定づける、非常に重要な「準備工程」です。

法律上の義務ではないからこそ、この捨てコンを省略せず、丁寧に水平に仕上げているかどうかは、その施工会社が「見えない部分の品質」をどれだけ大切にしているかを見極める一つのバロメーターとなります。

もし建築現場を見る機会があれば、基礎工事の初期段階である「捨てコン」がどのように施工されているかに注目してみるのもよいかもしれません。

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