建設現場における夜勤業務では、「夜勤手当」と「深夜割増賃金」が混同されがちです。
法的義務である割増賃金と、企業独自の福利厚生である手当の違いを正確に理解することは、適正な労働対価を得るために不可欠です。
本記事では、複雑になりやすい日給制や月給制における正確な計算方法、税務上の扱い、そして2024年問題による影響について、労働法規に基づき解説します。
- 夜勤手当(任意)と深夜割増賃金(義務)の法的な違い
- 建設業の日給制・月給制における割増賃金の計算式
- 夜勤手当の課税ルールと2024年問題が与える影響
1.【基礎知識】「夜勤手当」と「深夜割増賃金」の決定的な違い
深夜割増賃金
法律上の義務
22時〜翌5時の労働に対し
法的に支払いが必須
夜勤手当
企業の任意
企業が独自に設定する
労い・福利厚生的な手当
- 22時〜翌5時の労働時間が正確に記録されているか
- その時間に対して基礎単価の25%分が加算されているか
- 定額手当がある場合、それが「割増の代わり」か「上乗せ」か
「夜勤手当」という言葉は建設現場で頻繁に使われますが、厳密には法律用語ではありません。給与明細を確認する際は、以下の2つの概念を明確に区別して理解する必要があります。
法律で決まっているのは「深夜割増賃金」
労働基準法第37条において、使用者が労働者に午後10時から翌日午前5時までの間に労働させた場合、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分(25%)以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないと定められています。
つまり、名称がどうあれ、22時から翌5時の間に働いた場合は、基礎となる時給の1.25倍以上の賃金を受け取る権利が法的に発生します。
これを「深夜割増賃金」と呼びます。これは企業の裁量でカットすることはできません。
「夜勤手当」は企業独自の福利厚生
一方、「夜勤手当」とは、深夜割増賃金とは別に、企業が従業員の労をねぎらう目的などで独自に設定する手当を指すことが一般的です。
- 深夜割増賃金:法律上の義務(Base × 0.25)
- 夜勤手当:企業の任意(例:1回につき2,000円支給など)
企業によっては、深夜割増賃金を含めて「夜勤手当」という名称で支給しているケースや、固定残業代のようにあらかじめ一定額を含んでいるケースもあります。
就業規則や雇用契約書において、この手当がどのような性質のものとして定義されているかを確認することが重要です。
なぜ混同しやすい?給与明細のチェックポイント
建設業では「日給〇〇円」という契約が多く、夜勤を行った場合の日給が「通常日給+夜勤手当」なのか、「通常日給×1.25」なのか、あるいはその両方が含まれているのかが曖昧になりがちです。
給与明細や雇用契約を確認する際は、以下の点が明確になっているかを検証します。
- 22時から翌5時の労働時間数が正確に記録されているか
- その時間数に対して、基礎単価の25%分が加算されているか
- 別途「夜勤手当」などの名目で定額支給がある場合、それが割増賃金の代わりなのか、上乗せなのか
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2.【建設業版】いくら増える?給与形態別の計算シミュレーション

建設業界で働く労働者の給与形態は、職人の多くが採用する「日給制」と、施工管理職などに多い「月給制」に大別されます。それぞれの計算ロジックは以下の通りです。
日給制の場合(日給÷所定労働時間×1.25)
日給制の場合、まずは「1時間あたりの基礎賃金(時給単価)」を算出します。
計算式日給 ÷ 1日の所定労働時間(通常8時間) = 時給単価
深夜労働時の時給時給単価 × 1.25
【計算例】
- 日給:16,000円
- 所定労働時間:8時間(9:00~18:00)
- 夜勤シフト:20:00~翌5:00(休憩1時間含む、実働8時間)
- うち深夜労働(22:00~翌5:00):6時間(休憩1時間を除く)
算出プロセス
- 時給単価:16,000円 ÷ 8時間 = 2,000円
- 深夜割増分:2,000円 × 0.25 = 500円(1時間あたりの増額分)
- 深夜労働時間:22:00~翌5:00の7時間のうち、休憩1時間を引いた6時間が対象
- 深夜割増合計:500円 × 6時間 = 3,000円
※休憩1時間を深夜帯(22:00~翌5:00)の間に取得した場合
この日の給与総額は、基本の日給16,000円に深夜割増3,000円を加えた19,000円となります。企業独自の夜勤手当(例:2,000円)がある場合は、さらに加算されて21,000円となります。
月給制の場合(基礎賃金×1.25)
施工管理職などの月給制では、月ごとの所定労働時間を用いて基礎単価を計算します。
計算式:月給(基本給+諸手当※) ÷ 月平均所定労働時間 = 時給単価
※家族手当、通勤手当、別居手当などは除外されます。
【計算例】
- 月給:340,000円(手当除外後)
- 月平均所定労働時間:170時間
- 当月の深夜労働時間:20時間
算出プロセス:
- 時給単価:340,000円 ÷ 170時間 = 2,000円
- 深夜割増分:2,000円 × 0.25 × 20時間 = 10,000円
この月は基本給に加え、10,000円の深夜割増賃金が支払われます。
残業と夜勤が重なった場合(深夜残業=1.5倍)
1日の実働時間が8時間を超え、かつその時間が22時以降に及ぶ場合、「時間外労働(残業)」と「深夜労働」の割増率が合算されます。
- 時間外割増(残業):25%以上
- 深夜割増:25%以上
- 合計割増率:50%以上(1.5倍)
例えば、朝8時から働き続け、夜23時まで作業を行った場合、22時から23時の1時間は「残業」かつ「深夜」となるため、時給単価の1.5倍の賃金が発生します。
なお、法定休日に深夜残業を行った場合は、休日割増(35%)と深夜割増(25%)が加算され、合計60%増(1.6倍)となります。
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3.建設業界における夜勤手当の相場と実態

法律で定められた割増賃金とは別に支給される、企業独自の「夜勤手当」にはどの程度の相場があるのでしょうか。
現場監督と職人の相場の違い
一般的な傾向として、職務内容や責任の範囲により手当の額や仕組みが異なります。
求人票を確認する際は、「夜勤手当あり」という記載だけでなく、それが「固定額」なのか「割増賃金のこと」なのかを確認することが推奨されます。
施工管理(現場監督)
月給制が多いため、基本的には「深夜割増賃金」として法的計算通りに支払われるケース、あるいは固定残業代(みなし深夜手当)としてあらかじめ給与に含まれているケースが主流です。
夜勤専従の現場などに配属される場合、別途「現場手当」や「特殊勤務手当」として月額数万円程度が上乗せされる事例も見られます。
専門職人・作業員
日給制の場合、前述の計算例のように日給単価がベースアップするほか、福利厚生的な意味合いで「1回あたり1,000円~3,000円程度」の夜勤手当が支給されるケースがあります。
インフラ工事(鉄道、道路)など夜間工事がメインの職種では、最初から夜勤込みの高い日給設定になっていることもあります。
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4.知っておきたい税金と「2024年問題」の影響

夜勤によって増えた収入に関する税務上の扱いと、近年の法改正が建設現場の夜勤に与える影響について解説します。
夜勤手当にも税金はかかる?(原則課税と例外)
原則として、深夜割増賃金や夜勤手当は「給与所得」の一部とみなされるため、課税対象(所得税・住民税の対象)となります。
ただし、夜勤に伴う食事代の補助などは、一定の条件(金額など)を満たせば福利厚生費として非課税になる場合があります。
宿直や日直の手当(監視・断続的業務)については、1回4,000円程度までは非課税とされる規定がありますが、通常の建設作業を伴う夜勤はこれに該当せず、原則として課税されます。
働き方改革(2024年問題)で夜勤はどう変わるか
2024年4月から建設業にも適用された「時間外労働の上限規制」により、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間となりました。
これにより、以下のような変化が生じています。
- 労働時間管理の厳格化:
夜勤を含めた労働時間が厳密に管理されるようになり、長時間労働を前提とした「稼ぎ方」は難しくなりつつあります。 - 深夜割増の未払いリスクの低減:
コンプライアンス意識の高まりにより、これまで曖昧だった深夜割増賃金の計算や支払いが適正化される傾向にあります。 - 週休2日の推進:
夜勤明けの翌日を休みにするなど、休息時間の確保が義務付けられる現場が増えています。
参考:厚生労働省|建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
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5.適正な対価とキャリアを守るための知識
建設業における夜勤の対価は、法的な「深夜割増賃金」と任意の「夜勤手当」を区別して理解することが重要です。
特に日給制では計算が複雑化しやすいため、労働基準法の原則に基づき明細を確認する習慣が求められます。
正しい知識を持つことは、自身の労働価値を適正に評価する企業を見極め、安定したキャリアを形成するための基盤となります。
不明点は専門機関へ相談するなど、権利を守るための行動をおすすめします。
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