建設業界で重要な役割を担う中堅ゼネコンは、売上規模1,000億円~3,000億円の総合建設会社で、スーパーゼネコンに迫る高待遇を実現する企業も多数存在します。
特定分野での高い専門性を持ち、地域密着型から全国展開型まで多様な事業形態で安定した成長を続けています。2025年最新のランキングと転職情報を詳しく解説します。
- 2025年最新の中堅ゼネコン売上高・年収ランキング
- 各社の専門分野と独自の強み・技術力の特徴
- 中堅ゼネコンへの転職成功のポイントと将来性
1.中堅ゼネコンとは?定義と業界内での位置づけ

中堅ゼネコンは、売上規模1,000億円~3,000億円の総合建設会社で、地域密着型と全国展開型に分かれます。
売上規模1,000億円~3,000億円が中堅ゼネコンの基準
中堅ゼネコンの明確な定義基準は存在しませんが、一般的に年間売上高1,000億円~3,000億円の企業が該当します。従業員数は900人~2,500人程度で、独自の技術や工法を保有している点が特徴です。
2025年現在、準大手・中堅ゼネコン18社の平均売上高は約3,200億円となっており、中堅ゼネコンの平均は1,800億円程度です。
これらの企業は建設業界全体の約47万社のうちわずか18社で、業界シェアの7.8%を占める影響力の大きい企業群といえます。
参考:アーキブック|ゼネコンの売上高ランキング|ゼネコンランキング【2025年版】
スーパーゼネコン・準大手ゼネコンとの違いと特徴
スーパーゼネコンが売上1兆円超の巨大企業である一方、中堅ゼネコンは地域密着型のプロジェクトに強みを持ちます。
準大手ゼネコンの売上規模3,000億円~1兆円と比較すると規模は小さいものの、特定分野での高い専門性を発揮します。
住宅建設や特定分野の工業施設、地域の再開発プロジェクトなどで重要な役割を担っており、地域社会との強い結びつきを基盤とした安定経営を実現しています。
地域密着型と全国展開型に分かれる中堅ゼネコンの事業形態
中堅ゼネコンは大きく地域密着型と全国展開型の2つに分類されます。
■地域密着型
地元ネットワークを活かし、災害復旧工事や学校・福祉施設などの公共性の高い案件を得意とする
■全国展開型
奥村組や東亜建設工業のような企業で、公共工事や大型民間プロジェクトに参画している
地方中堅ゼネコンは平均売上100億~500億円規模で、都市整備や災害復旧、インフラ維持管理など社会貢献度の高い分野で活躍しています。両者とも地域経済やインフラ整備の現場を支える重要な存在です。
2.【2025年版】中堅ゼネコン売上高ランキングTOP8

2025年最新の中堅ゼネコン売上高ランキングを、企業別に詳しく解説します。
参考:アーキブック|ゼネコンの売上高ランキング|ゼネコンランキング【2025年版】
東亜建設工業|海洋土木に強みを持つ中堅ゼネコン

東亜建設工業は売上高3,179億円を誇る、海洋土木分野で国内トップクラスの実績を誇る総合建設会社です。
港湾、空港、海底トンネルなどの海洋インフラ整備に特化し、海上工事用の特殊船舶を多数保有しています。
羽田空港拡張工事や関西国際空港建設にも参画した高度な技術力を持ち、東南アジアや中東地域での海外展開も積極的に推進しています。
奥村組|安定した経営基盤を持つ総合建設会社

奥村組は関西を基盤とする総合建設会社で、売上高2,904億円を達成しています。官公庁建築に強みを持ち、土木・建築の両分野で高い技術力を発揮し、耐震・免震技術の開発をリードしています。
庁舎、病院、学校などの公共建築物で豊富な実績を持ち、自治体との長期的な信頼関係を構築しており、関西圏での強固な基盤により安定した経営を継続しています。
鉄建建設|鉄道工事に強みを持つ専門ゼネコン

鉄建建設は売上高1,795億円の、JR東日本グループとの協力関係を強みとする鉄道工事の専門ゼネコンです。
新幹線や在来線のトンネル工事で圧倒的な実績を持ち、山岳トンネルやシールドトンネルの技術開発をリードしています。
北陸新幹線や北海道新幹線建設にも参画し、鉄道工事特有の夜間作業や限られた時間での施工技術に長けています。
淺沼組|歴史ある総合建設会社

淺沼組は、創業100年以上の歴史を持つ大阪拠点の総合建設会社で、売上高1,557億円を達成しています。建築・土木両分野でバランスよく事業展開し、商業施設や文化施設の建設を得意とします。
大阪城天守閣の耐震改修工事や大阪大学医学部附属病院建設など、歴史的建造物から最新医療施設まで幅広い建築物を手がけ、高い品質と信頼性で知られています。
東洋建設|海洋土木・建築を得意とする企業

東洋建設は、東亜建設工業と同様に海洋土木に強みを持つ企業で、売上高1,544億円を達成しています。港湾や空港などの社会基盤整備に貢献し、特殊な海洋工法の開発も手がけています。
羽田空港拡張工事や関西国際空港建設にも参画し、近年では再生可能エネルギー関連のプロジェクトにも注力しており、海洋工事の需要拡大とともに高い成長性を有しています。
飛島建設|土木・建築に高い技術力を持つ企業

売上高1,209億円の飛島建設は、創業以来、土木と建築の分野で数々の実績を積み重ねてきた総合建設会社です。特にトンネル工事やダム建設において高い技術力を有し、山岳地帯での難工事を得意としています。
安全性と品質を重視した施工体制により、インフラ整備の重要なプロジェクトを多数手がけ、社会基盤の構築に貢献しています。
錢高組|高品質な建築物を手掛ける老舗ゼネコン

錢高組は関西を基盤とする老舗ゼネコンで、建築・土木両分野でバランスの取れた事業展開を行っています。
売上高1,206億円で、オフィスビルや商業施設、マンションなど質の高い建築物を手がけることで定評があり、耐震技術や環境配慮型建築にも力を入れています。
長年培った技術力と信頼関係により、安定した受注基盤を構築しています。
大豊建設|トンネル・地下工事の専門家

売上高990億円の大豊建設は、トンネル・地下工事に強みを持つ専門性の高い企業です。基礎工事や地盤改良工事を得意とし、特殊工法での豊富な実績を有しています。
高い技術力と豊富な経験により、安全かつ効率的な施工を実現しており、都市部の地下空間開発や山岳トンネル工事において、困難な地質条件下でも確実な施工を提供しています。
3.中堅ゼネコン年収ランキングと待遇比較

中堅ゼネコンの年収水準はスーパーゼネコンに迫る企業も多く、福利厚生や働き方改革への取り組みも充実しています。
【2024年度版】中堅ゼネコン平均年収ランキングTOP8
順位 | 企業名 | 年収 | 主な分野 |
---|---|---|---|
1 | 東亜建設工業 | 974万円 | 海洋土木・マリンコンストラクション |
2 | 奥村組 | 973万円 | 総合建設業(土木・建築) |
3 | 鉄建建設 | 916万円 | 鉄道関連建設・土木工事 |
4 | 淺沼組 | 896万円 | 総合建設業(建築・土木) |
5 | 錢高組 | 860万円 | 総合建設業(建築・土木) |
6 | 飛島建設 | 841万円 | 土木工事・建築工事 |
7 | 東洋建設 | 838万円 | 海洋土木・港湾工事 |
8 | 大豊建設 | 765万円 | 土木工事・建築工事 |
参考:東亜建設工業|有価証券報告書、奥村組|有価証券報告書、鉄建建設|有価証券報告書、淺沼組|有価証券報告書、錢高組|有価証券報告書、飛島建設|有価証券報告書、東洋建設|有価証券報告書、大豊建設|有価証券報告書
平均年収900万円超の高待遇中堅ゼネコン3社
中堅ゼネコンの年収ランキング上位5社は、東亜建設工業(974万円)、奥村組(973万円)、鉄建建設(916万円)、淺沼組(896万円)、錢高組(860万円)となっています。
これらの企業は中堅ゼネコンでありながらスーパーゼネコンに匹敵する高い年収水準を実現しています。
東亜建設工業は海洋工事での特殊技術により高付加価値プロジェクトを手がけ、従業員への還元も積極的に行っています。
奥村組は関西圏での強固な基盤と官公庁案件での高い収益性が年収の高さに反映されています。これらの企業では平均勤続年数も長く、安定した雇用環境を提供しています。
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福利厚生・働き方改革への取り組み状況
中堅ゼネコン各社は働き方改革への取り組みを強化しています。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、残業削減やワークライフバランス確保が推進されています。
多くの企業でテレワーク制度の導入、フレックスタイム制の拡充、有給取得促進が進んでいます。
資格取得支援制度や研修制度も充実しており、一級建築士や施工管理技士の資格取得に対する費用補助や勉強時間の確保を行っています。
健康経営への取り組みも活発で、定期健康診断の拡充、メンタルヘルス対策、働きやすい職場環境の整備に力を入れています。退職金制度や企業年金制度も整備され、長期的な安心を提供しています。
スーパーゼネコンとの年収格差は意外と小さい理由
中堅ゼネコンとスーパーゼネコンの年収格差は、売上規模の差ほど大きくないのが実情です。
中堅ゼネコンの平均年収約880万円に対し、スーパーゼネコンは1,000~1,200万円程度で、差額は200万円程度にとどまります。
また、人材不足が深刻な建設業界において、優秀な人材確保のため中堅ゼネコンも積極的な待遇改善を行っています。
地域密着型企業では生活コストの低い地方での勤務が多く、実質的な可処分所得では大手企業と遜色ない場合もあります。
昇進機会も大手より豊富で、若手でも責任ある立場に就きやすい環境が整っています。
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4.中堅ゼネコン各社の強み・専門分野を徹底分析

中堅ゼネコンは各社が独自の専門分野を持ち、特化した技術力で競争優位性を確保しています。
海洋土木・港湾工事に特化した中堅ゼネコン
東洋建設と東亜建設工業は海洋土木工事の分野でトップクラスの技術力を誇ります。
■東洋建設
港湾、空港、海底トンネルなどの海洋インフラ整備で豊富な実績を持ち、特殊な海洋工法の開発も手がけている
羽田空港の拡張工事や関西国際空港の建設にも参画し、高度な技術力を実証している
■東亜建設工業
海上工事用の特殊船舶を多数保有し、大型の海洋構造物建設に対応できる体制を整えている
両社とも海外展開も積極的で、東南アジアや中東地域での港湾整備プロジェクトに参画しています。海洋工事の需要は今後も拡大が見込まれ、これらの企業の成長性は高いといえます。
鉄道・トンネル工事で実績豊富な中堅ゼネコン
鉄建建設は鉄道関連工事で圧倒的な実績を持っています。
■鉄建建設
JR系列企業として新幹線や在来線のトンネル工事を多数手がけ、山岳トンネルや都市部のシールドトンネルの技術開発をリードしている
北陸新幹線や北海道新幹線の建設にも参画し、高速鉄道の技術進歩に貢献している
また、準大手ゼネコンの東急建設も東急グループの一員として首都圏の鉄道インフラ整備を担当し、駅舎建設や線路切り替え工事などの複雑な工事を得意としています。
両社とも鉄道工事特有の夜間作業や限られた時間での施工技術に長けており、安全性と品質の両立を実現しています。リニア中央新幹線の建設需要も今後控えており、更なる成長が期待されます。
建築・住宅分野で独自性を発揮する中堅ゼネコン
奥村組と淺沼組は建築分野で独自の強みを発揮しています。
■奥村組
官公庁建築に特化し、庁舎、病院、学校などの公共建築物で豊富な実績を持つ
関西圏での強固な基盤を活かし、自治体との長期的な信頼関係を構築している
免震・制震技術の開発にも積極的で、災害に強い建築物の提供を行っている
■淺沼組
大阪を拠点とし、商業施設や文化施設の建設を得意としている
大阪城天守閣の耐震改修工事や大阪大学医学部附属病院の建設など、歴史的建造物から最新医療施設まで幅広い建築物を手がけている
両社とも地域密着型の経営を行い、地元の建設需要を確実に取り込んで安定した成長を続けています。
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5.中堅ゼネコンの将来性と業界動向

中堅ゼネコンは安定した需要基盤とDX推進により、今後も堅調な成長が見込まれる分野です。
インフラ老朽化・災害復旧需要で堅調な成長見込み
日本のインフラの多くは高度経済成長期に建設されており、今後20年間で大規模な更新需要が発生します。橋梁、トンネル、上下水道、港湾施設などの維持・更新工事は中堅ゼネコンの主力分野です。
国土交通省の試算によると、2040年には道路橋の約75%、トンネルの約52%、港湾施設の約68%が建設後50年以上経過するとされており、膨大なインフラ更新需要が見込まれます。
また、頻発する自然災害により災害復旧工事の需要も拡大しています。地域密着型の中堅ゼネコンは迅速な対応力を活かし、被災地の復旧・復興工事で重要な役割を担っています。
これらの需要は景気変動の影響を受けにくく、中堅ゼネコンの安定経営基盤となっています。
DX・働き方改革で生産性向上を図る中堅ゼネコン
建設業界の人手不足解決のため、中堅ゼネコン各社はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を加速しています。
- BIM/CIMの導入による設計・施工の効率化
- IoTやAIを活用した施工管理システムの構築
- ドローンによる測量、建設ロボットの活用
- プレキャスト工法の拡大による現場作業の省力化 など
テレワークの導入により設計や事務業務の効率化も進み、ワークライフバランスの改善にも寄与しています。
これらの取り組みにより、従来の労働集約型産業から技術集約型産業への転換が進んでおり、生産性向上と働き方改革の両立を実現しています。
地方創生・再開発事業での中堅ゼネコンの役割拡大
政府の地方創生政策により、地方都市の再開発事業が活発化しています。
PPP(公民連携)やPFI事業への参画も増加しており、設計から建設、維持管理まで一貫して手がける案件も拡大しています。
コンパクトシティ政策により、地方都市の中心部への機能集約が進む中、中堅ゼネコンの地域ネットワークと機動力が重要な競争優位となっています。

地方自治体との長期的な信頼関係を基盤とし、持続可能な地域づくりに貢献する役割が期待されています。
6.中堅ゼネコンへの転職を成功させる3つのポイント

中堅ゼネコンは大手より入社しやすく、専門性を活かせる魅力的な転職先です。成功のポイントを解説します。
大手より入社しやすく高待遇な中堅ゼネコンの狙い目度
中堅ゼネコンは知名度では大手に劣るものの、就職難易度は比較的低く、待遇面では遜色ない企業が多数存在します。
奥村組や東亜建設工業などはスーパーゼネコン並みの年収を実現しており、コストパフォーマンスの高い転職先といえます。
人材不足が深刻な建設業界において、中堅ゼネコンは積極的な中途採用を行っており、経験者であれば比較的容易に転職可能です。
大手企業ほど競争が激しくないため、入社後も早期に責任あるポジションに就くことができます。
地方勤務が多い企業では住宅補助や家族手当が充実しており、実質的な生活水準は大手企業を上回る場合もあります。安定した経営基盤を持つ中堅ゼネコンは、転職市場において非常に魅力的な選択肢です。
専門分野の経験・資格が重視される中途採用の特徴
中堅ゼネコンの中途採用では、特定分野での実務経験と関連資格が高く評価されます。

一級建築士、一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士などの国家資格保有者は優遇される傾向があります。
海洋工事経験者は東洋建設や東亜建設工業で、鉄道工事経験者は鉄建建設で高く評価されます。
◎設計経験、現場監督経験、積算業務経験など、それぞれの職種で専門性の高い人材が求められている
◎BIM/CIMやICT施工の知識・経験も近年重視されており、デジタル技術に精通した人材は特に歓迎される
転職時には、これまでの経験をどのように新しい職場で活かせるかを具体的にアピールすることが重要です。資格取得支援制度も充実しているため、入社後のスキルアップも期待できます。
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転職エージェント活用で非公開求人にアクセスする方法
中堅ゼネコンへの転職を成功させるには、建設業界専門の転職エージェントの活用が効果的です。
多くの中堅ゼネコンは非公開求人として採用活動を行っており、一般の求人サイトでは見つけられない好条件の案件が多数存在します。
建設業界に精通したエージェントは、各社の企業文化や求める人材像を熟知しており、マッチング精度の高い転職支援を提供します。
面接対策や職務経歴書の添削サービスも受けられ、転職成功率を大幅に向上させることができます。
複数のエージェントに登録し、幅広い情報を収集することが重要です。
また、建設業界の人脈を活用した転職も有効で、業界イベントや勉強会への参加により人的ネットワークを構築することも転職成功の鍵となります。
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7.中堅ゼネコンは成長性と安定性を両立する転職先
中堅ゼネコンは売上規模こそスーパーゼネコンに及ばないものの、特定分野での高い専門性と地域密着型の強みを活かし、安定した成長を実現しています。
年収水準も大手企業に匹敵し、働き方改革やDX推進により魅力的な転職先として注目されています。
インフラ老朽化対応や災害復旧需要により、今後も持続的な事業機会が期待できる業界です。