建築業界で転職活動を始めるとき、多くの方が準備に悩まれるのが「ポートフォリオ」ではないでしょうか。これは、自身のスキルや経験を伝えるための大切な資料です。
ポートフォリオは、単なる作品集というよりも、自身の強みをアピールするための「自己紹介パンフレット」のようなものです。
特に中途採用の場合、「前の会社の作品を使っても大丈夫?」と、著作権や会社の秘密を守るルール(守秘義務)について不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、採用担当者に伝わるポートフォリオの作り方と、法的な観点から見た「適切に自分をアピールするためのルール」を分かりやすく解説していきます。
- 建築業界の転職で、なぜポートフォリオが大切なのか
- 新卒・中途など、状況別のポートフォリオ作成のコツ
- 中途採用の方が注意したい著作権や会社の秘密のルール
1.建築業界の転職でポートフォリオが「重要書類」と呼ばれる理由

履歴書や職務経歴書が「これまでの経歴」を文字で伝えるものだとすると、ポートフォリオは「実際にできること」や「将来の可能性」を目に見える形で伝えるものです。
建築業界、特に設計やデザインの仕事では、採用担当者は「入社後すぐに活躍してくれそうか」をしっかりと見ています。

過去にどんなプロジェクトに関わり、どんな工夫をして、どんな成果物を作ったのか。
これらを具体的に示せるのがポートフォリオです。
言葉で説明するだけでは伝わりにくい「デザインのセンス」や「技術力」、「考える力」をしっかりと伝えることができる、大切な「プレゼンテーション資料」だと考えると良いでしょう。
2.ポートフォリオ作成の前に|「新卒」と「中途」で異なる目的
ポートフォリオの目的:新卒 vs 中途
新卒・学生
「成長の軌跡」と「将来性」を示す
中途・社会人
「即戦力性」と「実務能力」を証明する
ポートフォリオで伝えるべきことは、新卒・学生の方と、社会人経験のある中途採用の方とでは少し異なります。
新卒・学生:「成長の軌跡」と「将来性」を示す
新卒採用の場合、会社での実務経験がないのは当たり前です。採用担当者も、作品の完成度だけを見ているわけではありません。
学校の課題やコンペに出した作品について、なぜそのテーマを選び、どう悩み、何を学んで、その作品ができたのか。その「成長のストーリー」を丁寧に見せることがポイントです。
中途・社会人:「即戦力性」と「実務能力」を証明する
中途入社の場合、「入社したら、こんな風に貢献できます」ということを具体的に証明することが大切です。
このとき、「著作権」や「会社への秘密」への配慮が、社会人としての信頼感を示すことにもつながります。
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建築業界への転職を考えている方は、年齢別の戦略も押さえておきましょう。30代・40代それぞれに適した転職アプローチがあります。
3.ステップ別|ポートフォリオ作成の具体的な手順
ポートフォリオの作成フローと進捗
1
掲載する作品の選定と整理
2
応募先に合わせた「ストーリー」の構築
3
必須の構成要素(自己紹介、目次など)の配置
4
レイアウトと製本(データ形式)
目的がはっきりしたら、以下のステップで作成を進めてみましょう。
Step 1:掲載する作品の選定と整理
まずは、過去の作品を一度すべて並べてみましょう。
その上で、「応募先の会社が求めている人物像」に合う作品を選んでいきます。
すべてを詰め込むのではなく、自身の強みや、これまでのキャリアの軸が伝わる作品を選ぶことが重要です。中途採用の方は、実際のお仕事のプロジェクトを中心にするのが良いでしょう。
Step 2:応募先に合わせた「ストーリー」の構築
ポートフォリオは、作品をただ並べるだけではもったいないです。
1冊を通して、自身がどう成長してきたか、そしてなぜこの会社で働きたいのか、という「ストーリー」が感じられると理想的です。
作品を見せる順番を工夫したり、各作品の説明文を応募先の会社が興味を持ちそうな内容に調整したりするなど、「伝える順番」と「伝え方」を考えてみましょう。
Step 3:必須の構成要素(自己紹介、目次など)の配置
採用担当者が見やすいように、基本的な「しおり」を整えます。
- 表紙:名前とタイトルを載せます。
- 自己紹介(プロフィール):これまでの経歴、持っているスキルや資格、自己PRを分かりやすくまとめます。
- 目次(インデックス):どのページに何が載っているか分かるようにします。
- 作品紹介:プロジェクトの概要、自分が担当した部分、使ったソフト、デザインの意図、制作にかかった期間などを明記します。
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職務経歴書と合わせて提出が求められる工事経歴書の書き方も重要です。建築業界特有の書類作成のポイントを押さえましょう。
Step 4:レイアウトと製本(データ形式)
デザインは、作品そのものの魅力が伝わるよう、シンプルで見やすいものを心がけましょう。
文字の大きさや余白などに統一感を持たせると、全体が洗練された印象になります。
最近近はPDFデータで提出を求められることがほとんどです。
データが重くなりすぎないように注意し、ファイル名に名前を入れる(例: Portfolio_Taro_Kenchiku.pdf)といった小さな配慮も大切です。
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4.【中途採用者・必読】中途採用者が守るべき著作権と守秘義務のルール

中途採用の方がポートフォリオを作る上で、一番気をつけたいのが「法律上のルール」です。
前職(あるいは今の仕事)で作ったものを扱う際には、丁寧な配慮が求められます。
なぜ法律への配慮が必要なのか?
会社の仕事として作成した設計図やデザインなどの権利(著作権)は、基本的には「会社」のものとなります。
また、プロジェクトに関する公開されていない情報や、お客様の情報、費用などは会社の「秘密」として守る義務(守秘義務)があります。

これらを無断でポートフォリオに載せて応募先の会社に見せてしまうと、著作権の侵害や守秘義務違反といった法律上のトラブルになる可能性があります。
原則:会社の権利と自身の権利の境界線
「自分が設計した」「自分がデザインした」という事実と、「その作品(成果物)を使う権利(著作権)」は別のもの、と考えるのが法律の基本的なルールです。
たとえ自身が中心となって進めたプロジェクトでも仕事として行った以上、それを転職活動で自由に使って良いわけではない、ということを覚えておきましょう。
参考:
文化庁|誰でもできる著作権契約マニュアル
e-Gov|著作権法
適切にアピールするための具体的な対処法
では、どうすれば適切に実務経験をアピールできるのでしょうか。
以下のような方法が考えられます。
- (推奨)前職・現職に許可をもらう:これが推奨される方法の一つです。
退職の相談をする際や在職中に、転職活動で使いたい旨を相談し、どの範囲なら公開して良いか(例:会社名やお客様の名前は隠す、公表された写真だけにする等)を確認し、できればメールなどで記録を残しておきましょう。 - 公開されている情報を利用する:すでに会社のホームページや建築雑誌などで「公表されている情報(竣工写真など)」だけを使うようにします。
- 機密情報を徹底的に隠す:図面に書かれているお客様の名前、住所、費用、内部の技術的な情報など、会社の秘密にあたる部分は削除したり、見えないように加工したりします。
- 面接の場だけで見せる:データを送らず、「面接の時だけ、直接お見せします」という形をとり、秘密を守る姿勢をしっかり見せる方法もあります。
こうしたルールへの配慮を忘れると、採用担当者に「ルールを守る意識が低いのでは?」と心配されてしまうかもしれません。
自身のスキルを証明すると同時に、「信頼できる社会人である」ことを示すためにも、ルールはしっかり守ることが大切です。
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5.他の応募者と差をつけるための「プラスアルファ」

基本的な構成や法律のルールを守った上で、さらに評価を高めるための工夫も加えてみましょう。
思考プロセスを伝える「手書きスケッチ」の活用
完成したキレイなCGや図面だけでなく、そこに行き着くまでのラフな手書きのスケッチやメモをあえて含めるのも良い方法です。
こうした一工夫は「どんなことを考え、どうアイデアを育てたのか」を伝える貴重な資料になります。
自身の「人となり」を伝える趣味や興味
自己紹介のページなどで、建築やデザインに関連する趣味(例:旅行、写真、家具作り、アート鑑賞など)に軽く触れることも、人柄を伝えるのに役立ちます。
そうした趣味が自身の仕事観にどう影響しているかを一言添えることで、ポートフォリオに温かみや深みを加えることができます。
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資格取得もポートフォリオと同様、転職成功の重要な要素です。二級建築士の資格情報や試験対策を確認しておきましょう。
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6.「実績」と「らしさ」で自己紹介をする
建築業界の転職におけるポートフォリオは、自身のスキルや経験、そして将来性を伝えるための大切な「自己紹介パンフレット」です。
特に中途採用の場合は、「即戦力であること」をアピールすると同時に、「著作権」や「会社の秘密」といった法律のルールを守る、高い意識を示すことがとても重要になります。
新卒・中途それぞれの目的に合わせて、自身の強みが伝わる「ストーリー」を組み立て、自信を持って転職活動に臨みましょう。
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