建設業界でのキャリアアップを目指す多くの方にとって、「1級建築施工管理技士」は価値の高い国家資格です。
この資格は、工事現場の技術的な管理を担う「監理技術者」として認められるために必須であり、取得することで自身の市場価値を大きく高められます。
しかし、これまでは受検資格が複雑で、多くの方が挑戦のハードルを感じていました。
その状況が、令和6年度(2024年度)から大きく変わりました。建設業界の深刻な人手不足や「2024年問題」への対策として、国土交通省は受検資格の大幅な緩和を決定したのです。
この記事では、1級建築施工管理技士の新しい受検資格について、制度改正のポイントを解説します。
- 令和6年度からの1級建築施工管理技士の受検資格改正の重要な変更点
- 「第一次検定」と「第二次検定」それぞれの新しい受検要件
- 学歴や実務経験に応じた、資格取得までの最短ルート
1.【最重要】1級建築施工管理技士の受検資格|令和6年度からの大きな変更点

今回の制度改正で、何が一番大きく変わったのでしょうか。
それは、これまで一体だった受検資格が「第一次検定」と「第二次検定」で明確に分離されたことです。
まずは、改正の背景と3つの主要な変更点を見ていきましょう。
なぜ受検資格が緩和されたのか?(建設業界の人手不足と2024年問題)
今回の改正の背景には、建設業界が直面する2つの大きな課題があります。
- 深刻な人手不足と高齢化:建設業界では、かねてより技術者や技能労働者の不足が問題となっており、特に若手の入職者が少ないことが課題でした。
- 2024年問題:2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これにより、少ない人数で現場を回すことが一層難しくなり、生産性の向上と人材確保が急務となっています。
これらの課題に対応するため、国土交通省は、より多くの人材が早期に資格を取得し、現場で活躍できるよう、受検資格の大幅な緩和に踏み切ったのです。
最大の変更点:第一次検定と第二次検定の要件が分離
従来の制度では、1級建築施工管理技士の試験を受けるためには、学歴に応じた一定期間の実務経験が必要でした。
- 【旧制度】
- 「第一次検定」を受ける時点で、大卒なら3年以上、高卒なら10年以上(指定学科の場合)といった実務経験が必須。
- 【新制度】
- 第一次検定:実務経験がなくても、19歳以上であれば受検可能に。
第二次検定:第一次検定合格後、一定期間の実務経験を積むことで受検可能に。

つまり、「まず第一次検定に合格し、その後で実務経験を積んで第二次検定に挑む」という、キャリアのステップが明確になったのです。
「技士補」とは?第一次検定合格の新たな価値
第一次検定に合格すると、「1級建築施工管理技士補(技士補)」という資格が得られます。
この「技士補」の資格は、単に第二次検定の受検資格が得られるだけではありません。
監理技術者(1級施工管理技士)が2つの現場を兼任する際に、その補佐役として現場に常駐できるなど、建設業法上の重要な役割が与えられています。
企業にとっても、技士補の存在は経営事項審査(経審)で加点対象となるため、第一次検定に合格するだけでも、個人の市場価値は大きく向上します。
参考|国土交通省:令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります
2.【第一次検定】受検資格|19歳以上なら誰でも挑戦可能に

それでは、新しい「第一次検定」の受験資格を詳しく見ていきましょう。
新制度:受検資格は「19歳以上」のみ
前述の通り、令和6年度からの新制度では、第一次検定の受験資格はシンプルになりました。
第一次検定の受験資格
試験実施年度末(例:令和7年3月31日)において、満19歳以上であること。
学歴、実務経験、保有資格など、これまでの複雑な要件は一切問われません。
これにより、例えば工業高校や大学の在学中(19歳以上)に、まず「技士補」の資格を取得することも可能になりした。
(参考)旧制度の学歴・実務経験要件
参考までに、いかに受験のハードルが下がったか、旧制度(令和5年度まで)の受験資格の一部をご紹介します。
- 大学の指定学科 卒業後 → 実務経験3年以上
- 短期大学・高等専門学校(5年制)の指定学科卒業後 → 実務経験 5年以上
- 高等学校の指定学科 卒業後 → 実務経験10年以上
- 上記以外 → 実務経験15年以上
これらと比較すると、新制度がいかに門戸を広げたかがお分かりいただけるかと思います。
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3.【第二次検定】受検資格|実務経験が必須

次に、施工管理技士としての最終ゴールである「第二次検定」の受検資格です。
こちらは引き続き、現場での実務経験が必須となります。
1級建築施工管理技士の第二次検定の受検に必要なルートは主に3つ
第二次検定を受験するためのルートは、主に以下の3つに整理されました。
合格
受験
合格
受験
旧制度の受験資格
(要件による)
受験
どのルートが最短かは、現在の状況によって異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ルート1:1級第一次検定合格後に実務経験を積む
これが、新制度における最も基本的なルートです。
- 19歳以上で「1級第一次検定」に合格し、技士補になる。
- その後、以下のいずれかの実務経験を積む。
- 実務経験が5年以上
- 「特定実務経験」1年を含む実務経験が3年以上
- 「監理技術者補佐」としての実務経験が1年以上
ここで新しく出てきた「特定実務経験」とは、請負金額4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の建設工事において、監理技術者や主任技術者などの指導下で積んだ経験を指します。
多くの場合、この「特定実務経験1年を含む3年」が最短ルートになるでしょう。
参考|国土交通省:令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります
ルート2:2級第二次検定合格後に実務経験を積む
すでに2級建築施工管理技士の資格を持っている方も、1級へのステップアップが可能です。
- 2級第二次検定に合格後、実務経験が5年以上
※ただし、1級第一次検定は2級合格後すぐに受検・合格しておく必要あり

2級合格後の実務経験5年のうち、「特定実務経験1年」を含めば「実務経験3年」に短縮可能です。
ルート3:【経過措置】旧制度の受験資格で受ける(令和10年度まで)
すでに豊富な実務経験をお持ちのベテラン技術者の方には、経過措置が設けられています。
令和10年度(2028年度)までの試験に限り、旧制度の受検資格(「第一次検定」の受験資格として定められていた実務経験年数)を満たせば、第一次検定と第二次検定を同年度に受検することが可能です。
例えば、指定学科の大学を卒業して実務経験が3年以上ある方は、従来通り、いきなり同年度に第一次・第二次検定の両方を受検できます。
4.【キャリア戦略】自身に合う受検ルートは?ケース別最短ガイド

制度が複雑に見えるかもしれませんが、状況別の最適な受検戦略を整理します。
ケース1:実務経験がまだない・浅い方(高卒・大卒など)
新制度の恩恵を最も受けるケースです。
【戦略】
「第一次検定」の合格を最優先とする。
【ステップ】
- 19歳になったら第一次検定を受検し、「1級技士補」の資格を取得する。
- 技士補として就職・転職し、実務経験を積む。
- 「特定実務経験1年を含む実務経験3年」を達成した時点で、「第二次検定」を受検する。
このルートなら、実務経験3年で1級建築施工管理技士になれる可能性があり、旧制度(大卒3年、高卒10年など)と比べて大幅なキャリアスピードアップが可能です。
ケース2:既に2級建築施工管理技士の資格を持っている方
【戦略】
1級の「第一次検定」を早めに合格しつつ、必要な実務経験を積む。
【ステップ】
- まずは1級の「第一次検定」に合格する。
- 2級合格後からの実務経験が5年(または特定実務経験1年を含む3年)に達するのを待つ。
- 要件を満たした時点で「第二次検定」を受検する。
ケース3:実務経験が豊富なベテラン技術者の方
【戦略】
経過措置(ルート3)を利用し、同年度での一発合格を目指す。
【ステップ】
- 学歴と実務経験年数が、旧制度の受検資格(例:大卒指定学科+実務3年など)を満たしているか確認する。
- 満たしている場合、令和10年度までに「第一次検定」と「第二次検定」を同年度に申し込み、受検する。
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5.受験資格の核となる「実務経験」とは?

第二次検定の受験に不可欠な「実務経験」とは、具体的にどのような業務を指すのでしょうか。
実務経験として認められる業務内容
実務経験として認められるのは、単なる作業ではなく、「施工管理」に関わる業務です。
具体的には、以下のような業務が該当します。
- 施工計画の作成: 工事のスケジュールや手順を計画する業務
- 工程管理: 計画通りに工事が進んでいるか管理する業務
- 品質管理: 建造物が設計図通りの品質を確保できているかチェックする業務
- 安全管理: 現場の事故防止や安全環境を整備する業務
発注者側(施主)の立場で設計や監督業務に従事した場合も、一部実務経験として認められるケースがあります。
新設された「特定実務経験」とは何か?
前述の通り、第二次検定の受検に必要な実務経験を短縮できる「特定実務経験」が新設されました。
これは、建設業法第26条第1項に規定される「主任技術者」または「監理技術者」の指導監督の下で行った実務経験であり、かつ、以下のいずれかの工事における経験を指します。
- 請負金額4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の建設工事
- 「監理技術者補佐」としての経験
この経験を1年以上積むことで、第二次検定受検までの期間を最短3年(1級第一次合格後)に短縮できます。
参考|一般財団法人 建設業振興基金:1級建築施工管理技士技術検定 受検の手引き 分冊(新受検資格用)
実務経験証明書の準備と注意点
受検申し込みの際には、これらの実務経験を証明するために「実務経験証明書」の提出が必要です。この書類には、勤務した会社からの証明(社印)が必要となります。
特に転職を経験している方は、過去の勤務先にも証明を依頼する必要が出てくるため、早めに準備を進めることが重要です。
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6.試験スケジュールと申し込み方法

最後に、例年の試験スケジュールと申し込み方法について確認しておきましょう。
※日程は変更される可能性があるため、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
試験スケジュール(申込期間・試験日)
例年のスケジュールは以下の通りです。
【第一次検定】
- 申込受付期間: 2月頃
- 試験日: 7月頃
- 合格発表: 8月頃
【第二次検定】
- 申込受付期間: 2月頃(※第一次検定免除者の場合)
- 試験日: 10月頃
- 合格発表: 翌年1月頃
※第一次検定と第二次検定を同年度に受験する場合、申し込みは第一次検定と同時に行います。
参考|一般財団法人 建設業振興基金:令和7年度1級 建築施工管理技術検定のご案内
申し込み方法と公式窓口(建設業振興基金)
試験の申し込みや受検資格に関する正式な情報は、試験の実施機関である「一般財団法人 建設業振興基金」のウェブサイトで公開されます。
受検の手引きを取り寄せ、インターネットまたは書面で申し込みを行います。
実務経験証明書の作成など書類準備には時間がかかるため、余裕を持って準備を開始しましょう。
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7.資格改正は建設業界でキャリアを築く大きなチャンス
今回は、令和6年度から大きく変更された1級建築施工管理技士の受検資格について解説しました。
重要なポイントをもう一度おさらいします。
- 第一次検定は「19歳以上」なら誰でも受検可能になった。
- まず「技士補」の資格を取り、その後実務経験を積んで「第二次検定」を目指すルートが確立された。
- これにより、学歴に関わらず、最短で実務経験3年(特定実務経験1年を含む)で第二次検定に挑戦できるようになった。
この受検資格の緩和は、建設業界が深刻な人手不足という課題を乗り越え、新しい時代に対応しようとする強い意志の表れです。
若手技術者や未経験から挑戦する方々にとって、自身のキャリアプランを明確に描き、市場価値を高めるための良い機会となるでしょう。
1級建築施工管理技士の資格は、監理技術者として大規模プロジェクトを動かす道を開くだけでなく、転職市場においても有利に働きます。
ぜひこの機会に、1級建築施工管理技士の資格取得に挑戦し、建設業界でのキャリアを築いていきましょう。
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