「建築業界の将来性が不安だ」そんな漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、建設業界は今、大きな変化の渦中にあります。
しかし、この変化は「危機」であると同時に、働き方を見直し、個人のキャリアを再設計する絶好の「好機」です。
この記事では、業界が直面する課題を直視した上で、それでも将来性が期待できる理由、そして最も重要な「変化の中で個人がどうキャリアを築くべきか」を解説します。
- 建築業界が直面する主な課題（人手不足、2024年問題）
- 課題がある中でも「将来性が暗くない」とされる根拠
- 将来性を高めるためのキャリア戦略と企業の見極め方
1．なぜ将来性が不安視されるのか？３つの課題
課題1 「人手不足」と「高齢化」
課題2 「2024年問題」
課題3 「資材高騰」と「企業倒産」
まずは、業界が直面している課題を解説します。
主に3つの大きな課題が指摘されています。
課題1：深刻化する「人手不足」と「高齢化」の現実
建設業界は、全産業の中でも特に人手不足と高齢化が深刻です。
このままでは、需要があっても「造る人がいない」という状況になりかねません。
課題2：待ったなしの「2024年問題」（時間外労働の上限規制）
2024年4月から、建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用されました。
これは、これまで常態化しやすかった長時間労働を法的に規制するもので、原則として月45時間・年360時間までしか残業ができなくなります。
働く人にとっては朗報ですが、企業側は「限られた時間」で「従来と同じ成果」を出さなければなりません。
従来の働き方のままでは、工期が遅れたり、利益が出なくなったりする可能性があります。
参考｜厚生労働省：建設業 時間外労働の上限規制わかりやすい解説
課題3：利益を圧迫する「資材高騰」と「企業倒産」の動向
近年、世界的な情勢不安や円安の影響で、木材、鉄骨、エネルギーなどの価格が高騰しています。
工事の契約を結んだ時点よりもコストが上がってしまい、完成させても利益が出ない、あるいは赤字になってしまうケースも増えています。
体力のない中小企業の中には、この資材高騰が引き金となり倒産を選ぶケースも出てきているのが現状です。
2．結論：建築業界の将来性が「暗くない」3つの根拠
根拠1 インフラ老朽化対策など「なくならない需要」
根拠2 法改正が後押しする「働き方改革」の本格化
根拠3 生産性を高める「DX・i-Construction」の推進
ここまで課題を見ると不安になるかもしれませんが、業界の未来は決して暗いわけではありません。
むしろ、これらの課題があるからこそ、業界全体が「変わらざるを得ない」状況にあり、そこに大きな可能性が生まれています。
根拠1：インフラ老朽化対策など「なくならない需要」
建物やインフラは、一度作れば終わりではありません。
日本は高度経済成長期に建設された橋、トンネル、水道管、公共施設などの老朽化が進んでおり、その維持・補修・建替えの需要は今後も絶えることがありません。
また、防災・減災のためのインフラ強化や、都市の再開発プロジェクトも継続的に発生します。
人々の生活と安全を守る建設業は、社会にとって「なくならない仕事」なのです。
根拠2：法改正が後押しする「働き方改革」の本格化
先ほどの「2024年問題」は、見方を変えれば「国が法律で、建設業の働き方改革を後押ししている」とも言えます。
「きつい、汚い、危険」といった従来の「3K」のイメージは、この法改正を機に大きく変わろうとしているといえるでしょう。
すでに業界全体で「新3K（給料・休暇・希望）」を掲げ、週休2日制の導入や給与水準の改善に本気で取り組む企業が増えています。
参考｜国土交通省：新３Kを実現するための直轄工事における取組
根拠3：生産性を高める「DX・i-Construction」の推進
人手不足や時間外労働の規制に対応するため、業界では「i-Construction（アイ・コンストラクション）」と呼ばれるDX（デジタルトランスフォーメーション）が急速に進んでいます。
ドローンでの測量、BIM/CIM（3Dモデルでの設計・施工管理）、遠隔操作の重機、現場管理アプリの導入など、IT技術で生産性を大きく向上させる取り組みです。
これにより、一人ひとりの負担を減らしつつ、より安全で効率的な現場が実現しつつあります。
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3．【キャリア視点】将来性があるのは「変化する企業」だけ
ここで最も重要な点をお伝えします。
それは、建設業界の将来性は、「業界全体」に等しくあるのではなく、変革に適応する「企業」と、そこで戦略的にキャリアを築く「個人」にこそあるということです。
始まっている「企業の二極化」とは？
2024年問題をきっかけに、企業は明確に二極化していきます。
一方は、DXや技術革新に投資し、働き方改革を進めて「新3K」を実現し、若手を採用・育成できる企業。
もう一方は、旧来のやり方を変えられず、人手不足と長時間労働から抜け出せない企業です。
言うまでもなく、将来性があるのは前者になります。
これからの転職やキャリア形成では、この「変化の側にある企業」を主体的に見極める視点が不可欠です。
将来性のある企業を見極める3つのポイント（DX投資・資格支援・休日数）
では、どうやって見極めればよいのでしょうか。
求人票や面接で確認すべき3つのポイントをご紹介します。
1.DXへの投資姿勢
現場管理アプリやBIM/CIM、ドローンなどを導入しているか、IT化に積極的かを確認しましょう。
生産性向上の意識が分かります。
2.資格取得支援制度
社員のスキルアップに投資しているかは重要です。
特に「施工管理技士」などの国家資格取得を会社がどうサポート（費用補助、研修など）してくれるかは、人材育成への本気度を示すバロメーターです。
3.年間休日数と残業時間
「週休2日制（土日祝休みなど）」が実際にどれだけ運用されているか、平均残業時間はどれくらいかを具体的に確認しましょう。
「新3K」への取り組みが分かります。
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4．未経験からでも間に合う！将来性を高めるキャリア戦略
建設業界は今、深刻な人手不足だからこそ、未経験者にも大きな門戸が開かれています。
なぜ今、未経験者採用が活発なのか
経験者の採用が難しい中、多くの企業が「未経験者を採用し、自社で育てる」方針に大きく舵を切っています。
特に、現場全体を管理する「施工管理」という職種では、未経験者向けの求人が急増しています。
これは、業界未経験であっても、基本的なビジネススキルやコミュニケーション能力があれば、入社後に専門知識を学ぶことで十分に活躍できると認識され始めたからです。
異業種の経験を強みに変える「ポータブルスキル」とは
「自分には建設業の経験がないから…」と不安に思う必要はありません。
例えば、営業職で培った「顧客との折衝能力」や、事務職で培った「スケジュール管理能力」、販売職での「チームの調整力」などは、すべて建設業でも通用する「ポータブルスキル（持ち運び可能なスキル）」です。
これらのスキルは、職人さんや発注者など多くの人と関わる「施工管理」の仕事で、そのまま大きな強みとなります。
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キャリアパスの王道「施工管理」から始めるメリット
もし未経験から建設業界でキャリアを築くなら、「施工管理」から始めるのが王道です。
施工管理は、工事の「工程・品質・原価・安全」の4大管理を担う、現場の司令塔です。プロジェクト全体を見渡すため、建設業の全体像を最も早く学ぶことができます。
そして何より、「施工管理技士」という国家資格を取得すれば、それは幅広く通用する武器になるでしょう。
実務経験を積みながら資格を取得することで、自身の市場価値を高めることができます。
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5．建設業界は「個人の戦略」が問われる時代へ
建設業界は、2024年問題や人手不足という大きな課題をバネに、DXと働き方改革を推進する「変革期」にあります。
「将来性がない」のではなく、「旧来のやり方のままでは将来性がない」というのが実態です。
この変化の時代は、主体的に学び、スキルを身につけ、「変化する企業」を選ぼうとする個人にとっては、むしろ大きなチャンスです。
ぜひ、ご自身のポータブルスキルを棚卸しし、この変革期をキャリアアップの好機として捉え、戦略的な一歩を踏み出すことが求められています。
