建設業界でキャリアアップを目指す際、最初の目標となるのが「主任技術者」です。
しかし、その要件は建設業法で複雑に定められており、分かりにくいと感じる方も多いでしょう。
本記事では、主任技術者になるための要件を「3つのルート」に整理し、ご自身の経歴に合った道筋が明確になるよう解説します。
- 主任技術者の具体的な役割と、混同されがちな監理技術者との違い
- 主任技術者になるための3つのルート
- 必要な実務経験年数や、対象となる国家資格の一覧
1.主任技術者とは?建設現場に不可欠な役割と法的根拠

主任技術者とは、建設業法第26条に基づき、建設工事の現場に必ず配置しなければならないと定められている技術者のことです。
工事現場における施工計画の作成、工程管理、品質管理、そして安全管理など、工事全体の技術的な指導監督を一手に担う、まさに現場のキーパーソンといえる存在です。
法律で定められた「工事の品質と安全を守る」責任者
主任技術者の最も重要な役割は、建設工事が設計図書通りに、かつ安全基準を満たして行われるよう管理・監督することです。
建設業の許可を受けた業者が工事を請け負う場合、その請負金額の大小にかかわらず、全ての現場に主任技術者を配置する義務があります。
もし主任技術者を配置しなかった場合、建設業法違反となり、厳しい罰則(営業停止処分など)の対象となる可能性もあります。
これは、主任技術者というポジションが、建設工事の品質と安全を担保する上でいかに重要であるかを示しています。
混同しやすい「監理技術者」との明確な違いとは?
主任技術者とよく似た名称のポジションに「監理技術者」があります。
両者はどちらも現場の技術管理を担いますが、その役割と配置される工事の規模に明確な違いがあります。
一番の違いは、担当できる工事の規模(請負金額)です。
発注者から直接工事を請け負い、かつ下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の下請契約を締結する大規模な工事では、主任技術者の代わりに「監理技術者」を配置しなければなりません。
これらの金額は、建設業法施行令の改正(令和5年1月1日施行)により引き上げられたものです。
つまり、監理技術者は主任技術者の上位資格と位置づけられており、より大規模で複雑な工事現場を管理する、高度な知識と経験が求められる技術者であるといえます。

キャリアパスを考える上では、まず主任技術者としての経験を積み、次に監理技術者を目指すのが一般的なステップとなります。
参考|一般財団法人 建設業技術者センター:監理技術者の配置が必要な建設工事等の金額要件の引き上げについて
2.【3分でわかる】主任技術者になるための3つのルート
+
実務経験
の取得
10年以上
主任技術者になるための要件は、建設業法で定められており、大きく分けて3つのルートがあります。
ご自身のこれまでの経歴や保有資格によって、どのルートで目指すのが最適かが変わってきます。
一つずつ詳しく見ていきましょう。
参考:国土交通省|参考資料1
ルート1:学歴と実務経験で目指す
一つ目は、指定された学科を卒業し、その後に一定期間の実務経験を積むことで要件を満たす方法です。
必要な実務経験の年数は、最終学歴(大学・高校・専門学校)によって異なります。
例えば、大学の指定学科を卒業した場合は3年以上、高校の指定学科を卒業した場合は5年以上の実務経験が必要です。
この「指定学科」には、土木工学や建築学、電気工学などが含まれます。
ルート2:国家資格の取得で目指す
二つ目は、建設業法で定められた国家資格を取得する方法です。
このルートの最大のメリットは、資格を取得すれば学歴や実務経験の年数を問われずに主任技術者になれる点です。
対象となる資格は多岐にわたりますが、代表的なものに「1級・2級建築施工管理技士」や「1級・2級土木施工管理技士」、「電気主任技術者(第1種~第3種)」などがあります。
実務経験を積みながら資格取得を目指すのが、キャリアアップの王道といえるでしょう。
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主任技術者資格の取得を目指す方に、施工管理技士の資格について詳しく解説しています。キャリアアップに最適な資格選びの参考にしてください。
ルート3:10年以上の実務経験で目指す
三つ目は、学歴や資格を問わず、建設工事に関する10年以上の実務経験を積むことで要件を満たす方法です。
このルートは、学歴の要件を満たさない方や、指定学科以外の学部を卒業した方でも、長年の現場経験を通じて主任技術者を目指せる道です。

ただし、複数の建設工事の経験がある場合は、その経験が建設業種ごとに判断される点に注意が必要です。
3.【一覧表】学歴・指定学科別に必要な実務経験年数
学歴と実務経験で主任技術者を目指す場合、どの学校で何を学んだかによって必要な年数が変わります。
ご自身の経歴がどれに該当するか、以下の表でご確認ください。
| 学歴 | 卒業区分 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|---|
| 大学・専門学校(高度専門士) | 指定学科を卒業 | 3年以上 |
| 短期大学・高等専門学校・専門学校(専門士) | 指定学科を卒業 | 5年以上 |
| 高等学校・中等教育学校 | 指定学科を卒業 | 5年以上 |
| 上記以外 | 学歴を問わず | 10年以上 |
参考|国土交通省:技術検定制度における実務経験の意義について
■主任技術者を目指すなら、実務経験が積める環境選びが重要
主任技術者の要件を満たすためには、質の高い実務経験を積むことが不可欠です。カラフルスタッフィング建設では、正社員として安定した雇用環境のもと、多様な現場経験を積むことができます。充実した研修制度とキャリアサポートで、着実にステップアップを目指せます。
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4.主任技術者になれる国家資格一覧|おすすめの資格と難易度
施工管理技士
主任技術者の要件を満たす国家資格は、担当する工事の種類によって様々です。
ここでは、代表的な資格をいくつかご紹介します。
1級・2級 建築施工管理技士
建築工事全般を管理するエキスパート。
特に2級は「建築」「躯体」「仕上げ」の3つの種別に分かれており、実務経験を積みながら段階的に取得を目指しやすい人気の資格です。
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一級建築施工管理技士の資格価値や試験対策について、より詳しい情報を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
1級・2級 土木施工管理技士
道路や橋、ダムなど土木工事のスペシャリスト。
インフラを支える重要な役割を担います。
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土木施工管理技士の資格取得から年収アップまで、具体的なステップを知りたい方はこちらの記事が参考になります。
1級・2級 電気工事施工管理技士
建設現場の電気工事に関する施工管理を行います。
第一種・第二種・第三種 電気主任技術者
事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安監督者です。
建築士(一級・二級)
建物の設計・工事監理を行う専門家です。
これらの資格は、いずれも専門的な知識が問われるため、計画的な学習が必要です。
しかし、取得すれば主任技術者への道が拓けるだけでなく、転職市場での価値も大きく高まります。
5.主任技術者を目指す上での重要ポイントと注意点

主任技術者の要件を満たすだけでなく、実際に現場で業務を行う上で知っておくべき重要なポイントがいくつかあります。
原則「正社員」としての直接雇用が必要
主任技術者は、その工事を請け負った建設業者と、直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが原則として求められます。
つまり、派遣社員や短期契約のアルバイトではなく、正社員として雇用されている必要があります。
これは、工事期間中の責任の所在を明確にするための重要なルールです。
工事金額で決まる「専任」と「非専任」の違い
主任技術者は、公共性のある重要な建設工事(※)で、かつ工事1件の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の現場に配置される場合、「専任」である必要があります。
※国または地方公共団体などが発注する工作物に関する工事や、多数の者が利用する施設に関する重要な工事が該当します。
「専任」とは、他の工事現場と兼務することなく、その現場に常駐して職務に専念することを意味します。
一方で、上記の金額に満たない工事の場合は「非専任」として、複数の現場を兼務することが認められています。
実務経験を証明する書類の準備
実務経験で主任技術者の要件を満たす場合、その経験を客観的に証明する書類の準備が必要です。
一般的には、過去に在籍した企業からの「実務経験証明書」や、担当した工事の契約書などが求められます。

転職を考えている場合は在職中にこれらの書類を準備しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
■実務経験を確実に積める環境で、主任技術者への道を
主任技術者になるには、実務経験の積み重ねと適切な書類管理が重要です。カラフルスタッフィング建設では、正社員待遇で月給60万円・賞与ありの好条件のもと、確実に実務経験を積むことができます。経験証明書の発行など、キャリア形成に必要なサポートも万全です。
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6.主任技術者の要件理解は、キャリアプランニングの第一歩
今回は、建設現場に不可欠な「主任技術者」になるための要件について、3つのルートを中心に詳しく解説しました。
主任技術者の要件は、建設業法で定められた単なるルールではありません。
ご自身の学歴、実務経験、そして今後の目標に合わせて最適なルートを選び、計画的にステップアップしていくことが、キャリア形成において重要です。
まずはご自身の経歴を棚卸しし、どのルートで主任技術者を目指せるのかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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