「このまま建築業界にいて将来は大丈夫だろうか」
「長時間労働がきつい。ワークライフバランスを改善したい」
20代で建築業界に従事する方々から、こうしたキャリアに関するご相談をいただく機会が増えています。
2024年4月からは「働き方改革関連法」により、建設業にも時間外労働の上限が設けられました。
いわゆる“2024年問題”によって、業界の厳しい働き方が改めて注目されています。
しかし、建築業界で培った経験は、決して無駄にはなりません。むしろ、20代で得た高度な専門スキルは、異業種でも高く評価される「ポータブルスキル」の宝庫です。
この記事では、労働法規やキャリア理論の観点から、20代の建築業界経験者が活かせるスキルや、後悔しない転職の進め方をわかりやすく解説します。
- 20代で建設業界から転職を考える背景(2024年問題と業界の課題)
- 建設業界の経験(施工管理・設計など)が異業種でどう活かせるか
- 20代におすすめの具体的な転職先キャリアパスと成功のステップ
1.なぜ20代で建築業界からの転職を考えるのか?

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、業界は転換期を迎えています。ここでは、データをもとに業界の構造的課題を整理し、20代が転職を考える背景を解説します。
業界の現状と「2024年問題」がもたらす変化
建設業界は今、大きな変革期を迎えています。
2024年4月から、「働き方改革関連法」により、建設業にも「時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)」が罰則付きで適用されました。
これは、長時間労働を減らすための大きな一歩です。
しかし、同時に、工期の見直しや生産性向上が進まなければ、現場の負担が増えたり、会社の利益が減ったりする可能性もあります。
こうした変化の中で、特に20代の方が「この業界で働き続けるべきか」と考えるのは、自然なことです。将来を見据えて、次のキャリアを考え始めるのは、とても前向きな判断といえます。
データで見る建設業界の構造的課題

実際、国土交通省のデータによると、建設業の就業者は60歳以上が25.7%を占める一方、29歳以下は11.7%に留まっており、高齢化が深刻です。
さらに民間の調査では、人手不足による建設業の倒産が過去最多ペースで増加しており、有効求人倍率が全産業の平均を大きく上回っています。
こうした「きつさ」や「将来への不安」は個人の問題ではなく、業界全体の構造的な課題でもあるのです。
参考|
国土交通省:最近の建設産業行政について
帝国データバンク:上半期の人手不足倒産 202件 2年連続で過去最多を更新
「きつい」「将来が不安」は業界共通の悩み
建設業界は「きつい・汚い・危険」という「3K」のイメージをもたれがちです。
最近は技術の進歩や働き方改革によって、少しずつ改善も進んでいます。
とはいえ、天候で工期が変わったり、タイトなスケジュールや関係者との調整に追われたりなど、体力的にも精神的にも負担が大きいと感じる場面は多いでしょう。
2.20代の建築経験は無駄にならない!異業種で活かせる「ポータブルスキル」

建築業界で培った経験は、異業種でも高く評価される「ポータブルスキル」の宝庫です。施工管理や設計・積算で身に付けた能力を言語化し、転職市場で強みとして伝える方法を解説します。
【キャリアの棚卸し】これまでの経験を「強み」に言語化する方法
転職活動で大切なのが、「キャリアの棚卸し」です。これは、これまでの経験を振り返り、自分が持つスキルや強みを明確に言語化する作業を指します。
特に意識したいのは、業種や職種が変わっても通用する「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」です。建築業界での経験は、このポータブルスキルの宝庫といえます。
例えば、「大変だった現場を乗り越えた」という経験を、以下のように分解・言語化してみましょう。
課題発見力

工程の遅れに対し、どの工程がボトルネックになっているかを特定した。
交渉・調整力

複数の下請け業者と粘り強く交渉し、人員配置の変更や納期の再調整を行った。
実行力

品質を担保しつつ、工期内にプロジェクトを完遂させた。
このように言語化することで、「頑張った経験」が「自分の強み」として伝わるようになります。転職活動において、こうした経験の言語化はとても大切です。
(例)施工管理経験者の強み:プロジェクト管理能力、調整力
施工管理(現場監督)の経験は、転職市場でとても高く評価されます。なぜなら、現場で「工程・品質・原価・安全」の4つを毎日管理しているからです。
実はこのスキルは、どの業界でも通用する“プロジェクトを動かす力”そのものです。
プロジェクト管理の4つの柱
原価
予算を守る
工程
納期を調整する
調整力
関係者と連携して働く
品質
最終的に成果物を出す
こうした経験は、IT業界やメーカー、コンサルティングなど、さまざまな業界で高く評価されます。
現場で培った力は、他の業界でもしっかり通用する「強み」なのです。
▼あわせて読みたい
施工管理の経験を活かした転職先について、具体的な業種や企業の選び方を詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
(例)設計・積算経験者の強み:論理的思考力、法令・コスト感覚
設計職の経験がある方は、顧客の要望と建築基準法などの厳しいルールの中で、最適な答えを導き出す力を身に付けています。これはまさに「論理的思考力」と「課題解決能力」です。
また、積算の経験がある方は、プロジェクト全体の利益を左右する「コスト感覚」や「数字に対する強さ」を持っています。
こうしたスキルは、企業の経営企画や財務、あるいはコンサルタントといった職種で即戦力として期待されるスキルです。
3.【職種別】20代建築業界からのおすすめ転職先キャリアパス
1年目の経験を活かす3つのキャリアパス
建築業界からの転職には、経験を直接活かす道、スキルを応用する道、資格を活かす道の3つがあります。不動産デベロッパーやIT業界など、20代の経験を評価する具体的な転職先を紹介します。
1. 経験を直接活かす(同業界・近接業界)
「建築の知識は活かしたいが、働き方を変えたい」という場合に適したキャリアパスです。
不動産デベロッパー(プロジェクト管理)
発注者(施主)側として、建設プロジェクト全体をまとめる仕事です。
ゼネコンや設計事務所とのやり取りを調整する立場となり、施工管理で培った現場知識や調整力が最大限に活かせます。
さらに、年収が上がったり、残業が減ったりと、ワークライフバランスが改善されるケースが多いのが特徴です。
建設コンサルタント
官公庁や民間企業に対して建設プロジェクトの企画や調査、設計、発注者支援などを行う仕事です。
施工管理での経験を活かし、より上流工程からプロジェクトに関わることができます。高度な専門知識を活かして、プロジェクト全体をリードできるのが魅力です。
公務員(技術職)
都道府県庁や市町村の職員として、公共工事の計画や発注、現場監督などを担当する仕事です。
安定した働き方や、残業の少ない環境を重視する方に向いています。
応募には、建築士や施工管理技士の資格が必要な場合もあります。
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建築業界での30代のキャリア戦略について、年収データや必要資格、求人動向を詳しく解説した記事はこちらです。
2. スキルを応用する(異業種)
「まったく新しい分野に挑戦したい」という場合に、建築で培ったポータブルスキルを活かすキャリアパスです。
IT業界(プロジェクトマネージャー)
施工管理の経験は、IT業界のプロジェクトマネージャー(PM)と非常に相性がいいです。
システム開発の進捗管理や予算管理、チームビルディングなど、建設現場で培った管理能力がそのまま活かせます。
メーカー(生産管理・品質管理)
工場の生産ラインにおける「工程管理」「品質管理」「安全管理」は、建設現場の施工管理と共通する点が多くあります。
ものづくりの流れを管理する力を活かせるため、即戦力として活躍できる可能性が高い分野です。
■施工管理経験を活かして高待遇で働きませんか?
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3. 資格を活かす(建築士など)
専門性を高めるキャリアアップ転職
建築士や施工管理技士などの国家資格は、転職において高く評価される要素になります。
特に1級建築士や1級施工管理技士は、企業の評価(経営事項審査)にも直結するため、市場価値が安定している資格です。
これらの資格を活かし、より専門性を追求できる設計事務所や、資格取得支援に厚い企業へ転職し、専門家としてのキャリアを伸ばす道もあります。
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施工管理技士補の資格で転職を有利に進めたい方は、資格取得のメリットや最短取得法を解説したこちらの記事をご覧ください。
4.20代の転職活動を成功させるための具体的なステップ
転職成功への3ステップ
転職エージェントの賢い選び方
(特化型 vs 総合型)
応募書類と面接で「強み」を伝える方法
(自己分析と企業研究が鍵)
円満退職の手続きと法的な注意点
(引継ぎとスケジュールの管理)
転職を成功させるには戦略的な準備が欠かせません。転職エージェントの選び方から、応募書類・面接での強みの伝え方、円満退職の手続きまで、3つのステップで解説します。
ステップ1:転職エージェントの賢い選び方(特化型 vs 総合型)
転職活動をスムーズに進めるためには、転職エージェントの活用は有効です。
エージェントには大きく分けて2種類あります。
転職エージェントの種類と特徴
総合型エージェント
幅広い業種・職種の求人を扱っており、異業種への転職やキャリアの選択肢を広げたい場合に適しています。
特化型エージェント
建設・不動産業界やIT業界など、特定の分野に強みを持っています。業界の内部事情に詳しく、専門的なアドバイスが期待できます。
20代の転職では、まずは総合型で可能性を広げ、希望が明確になったら特化型で専門的にサポートをしてもらう併用がおすすめです。
▼あわせて読みたい
施工管理に特化した転職エージェントの選び方や、特化型と総合型の使い分けについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ステップ2:応募書類と面接で「強み」を伝える方法
応募書類や面接では、前述した「ポータブルスキル」を具体的なエピソードを一緒に伝えることが大切です。
ただ「施工管理を3年間やりました」ではなく、たとえばこのように表現してみましょう。

5つの業者、総勢30名がかかわる現場で週1回の定例会を主催。
進歩のズレを早期に発見し、工程を再調整することで、無事故で工期内にやりとげた。
このように、具体的な行動と成果を伝えると、採用担当者にしっかり伝わります。
また、転職理由は前職への不満ではなく、前向きに言い換えることが重要です。

建設現場で培ったプロジェクト管理能力を、ITという新しい分野で活かし、より早いスピードで社会に影響を与えたい。
こうした前向きな言葉で伝えることが、成功につながります。
ステップ3:円満退職の手続きと法的な注意点
転職先が決まったら、円満退職に向けた手続きを進めましょう。
法律上は、退職の意志は2週間前までにすればよいとされています。(民法第627条第1項)
しかし、実務上は、業務の引継ぎや後任の確保を考慮し、就業規則の定めに従って1ヶ月〜3ヶ月前に直属の上司に伝えるのが一般的です。
もし強く引き止められても、感情的にならず、転職の意思が固いことと感謝の気持ちを丁寧に伝えましょう。
退職届は、一方的な通知となるため、まずは口頭で相談し、合意が得られてから「退職願」を提出するのがスムーズな流れです。
■転職活動を専門スタッフがしっかりサポート
カラフルスタッフィング建設では、建設業界に精通した専門スタッフが、あなたの転職活動を無料でサポートします。応募書類の添削や面接対策はもちろん、円満退職のアドバイスや入社後のフォローまで、一貫してサポート。20代の建築業界経験者に最適な求人をご紹介し、理想のキャリア実現をお手伝いします。
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5.建築業界からの転職でよくある質問(FAQ)

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未経験の職種に転職することは可能ですか?
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A. 可能です。
特に20代は「ポテンシャル採用」の枠が広く、人柄や学習意欲も重視されます。
ただし、全くの未経験よりは、「ポータブルスキル」をアピールすると採用されやすくなります。
「未経験」ではなく、「異業種からの即戦力」として自分を売り込むことが大切です。
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転職によって年収が下がることはありますか?
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一時的に下がる可能性はあります。
特に未経験の異業種に挑戦する場合は、新しいスキルを学ぶ期間として、給与がリセットされることもあります。
一方、デベロッパーやIT業界のプロジェクトマネージャーなど、建築経験が評価される分野への転職では、年収が上がるケースも少なくありません。
目先の年収だけでなく、3年後、5年後にどのようなキャリアと年収を実現したいかという長期的な視点で判断することが大切です。
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ワークライフバランスは改善できますか?
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改善できる可能性は高いです。
ただし、転職先企業の社風や職種によります。
例えば、同じIT業界でも、常に納期に追われる開発現場と、安定運用の保守部門では働き方は大きく異なります。
面接の「逆質問」を活用し、残業時間の実態や、繁忙期の状況、育児休暇の取得実績など、リアルな働き方について具体的に確認することがおすすめです。
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未経験から施工管理へ転職する際の成功率や具体的なステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
6.建築業界経験を活かす20代の転職戦略
建設業界での経験は、20代にとって大きな財産です。
施工管理や設計、積算などで培ったスキルは、異業種でも評価される「ポータブルスキル」として活かせます。
キャリアの棚卸しで強みを言語化し、応募書類や面接では具体的なエピソードとともに伝えることが転職成功のポイントです。
建設経験を強みに、自分に合ったキャリアを選ぶことで、将来につながる働き方が実現できるでしょう。