空調設備の導入や取引先選定の際、「空調設備会社ランキング」は重要な判断材料です。
しかし、売上高やシェアといった客観的データだけでなく、企業の健全性や技術力への投資姿勢を評価することが、失敗を避ける鍵となります。
本記事では、最新のサブコン・メーカーランキングと各社の詳細情報、さらに労働法制と人事労務管理の実務の観点から導き出された優良企業を見極めるための具体的なチェックポイントを解説します。
- 最新の空調設備工事会社(サブコン)売上ランキングと企業概要
- 企業の安定性・技術力を測る労働環境や資格支援制度のチェックポイント
- 空調設備工事のメーカー系・独立系の違いと適正な費用相場
1.空調設備会社ランキングの二大分類と情報の活用方法
空調設備会社選定ガイド
選定の「目的」に応じて、選ぶべき会社種別が変わります
目的:工事の依頼・設計・施工
選ぶべきは【サブコン】
目的:機器の選定・製品ラインナップ
選ぶべきは【メーカー】
空調設備に関するランキング情報は、その性質上、以下の2つに大別されます。企業選定の目的が「工事の依頼」か「機器の選定」かによって、参照すべき情報が異なります。
| ランキングの種類 | 構成する企業・製品 | 示す情報と活用目的 |
|---|---|---|
| 工事会社(サブコン)ランキング | 高砂熱学工業、ダイダンなどの設備工事専門企業 | 企業の規模、市場での地位、大規模工事の実績(発注先候補) |
| メーカーランキング | ダイキン、三菱電機、日立などの空調機器製造企業 | 製品の市場シェア、技術革新の動向、製品ごとの強み(機器選定) |
高品質な空調設備の導入は、優れた工事会社の技術力と高性能なメーカーの製品力の両方が組み合わさって初めて実現されます。この両者のランキングを総合的に判断することが重要です。
2.空調設備工事会社(サブコン)売上ランキングと業界の勢力図

空調設備工事を主業務とする企業は、総合建設業の専門工事業者として「サブコン(サブコントラクター)」と呼ばれます。彼らの売上高は、業界における影響力と大規模プロジェクトへの関与度を示す客観的な指標です。
大手サブコンの売上高・平均年収ランキングと詳細
| 順位 | 企業名 | 売上高(単体) | 平均年収 | 主な事業内容 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 高砂熱学工業 | 2,742億円 | 1,129万円 | 空調設備を中核とした建築設備の設計・施工・保守、環境エンジニアリング |
| 2位 | ダイダン | 2,486億円 | 1,066万円 | 電気・空調・水道衛生・消防設備など総合設備工事の設計・施工・管理 |
| 3位 | 三機工業 | 2,247億円 | 1,078万円 | 建築設備(空調、給排水など)、プラント設備、物流・搬送機器の設計・施工 |
| 4位 | 新菱冷熱工業 | 2,239億円 | – | オフィス、商業施設、病院、工場など各種施設の空調・環境エンジニアリング |
| 5位 | 大気社 | 1,586億円 | 1,068万円 | ビル空調、産業空調、自動車塗装システムを柱とする総合エンジニアリング |
1位:高砂熱学工業

空調設備工事の分野で業界を牽引する大手企業です。オフィスビルやデータセンター、工場など、高度な空調技術が要求される大規模プロジェクトに強みを持っています。
熱と空気に関する高度なエンジニアリング技術を応用し、省エネや環境負荷低減に貢献するソリューション開発にも積極的です。
2位:ダイダン

電気、空調、給排水衛生、消防設備など、多岐にわたる設備工事を手掛ける総合設備企業です。管工事と電気設備工事を主軸とし、多様な設備を一元的に設計・施工・管理できる体制が強みです。
著名な大規模建築物における豊富な実績を国内外で有しています。
参考:ダイダン|有価証券報告書
3位:三機工業

建築設備事業(空調・給排水など)を核とする一方、工場のプラント設備や、物流施設などで利用される搬送機器の分野も手掛けています。
幅広い事業領域を持つことで、多様な顧客ニーズに対応する総合エンジニアリング能力を持つ企業です。
参考:三機工業|有価証券報告書
4位:新菱冷熱工業

オフィス、商業施設、病院、工場といった幅広い建築物において、空調設備を中心とする環境エンジニアリングを提供する企業です。
クリーンルームなどの特殊な環境設備にも実績を持ち、総合的な設備技術を強みとして、国内外で事業を展開しています。
参考:新菱冷熱工業|損益計算書
5位:大気社

ビル空調、産業空調、そして自動車の塗装ライン設備を担う塗装システムの3事業を柱とする企業です。塗装システム分野ではグローバルで高いシェアを誇り、海外での事業展開に特徴があります。
独自の換気・空調技術を応用し、クリーンな生産環境づくりに貢献しています。
参考:大気社|有価証券報告書
技術力の信頼性を測る指標|「資格保有者数」と「経営事項審査」
企業の技術力の高さを評価する際は、売上高だけでなく、「管工事施工管理技士」や「建築設備士」といった国家資格の保有者数に注目することが合理的です。
これらの上位資格保有者が多い企業は、人材育成と技術研鑽に継続的に投資していることを示します。
また、建設業法に基づく経営事項審査(経審)において、上位資格保有は企業の客観的な評価点を加算させる要因となります。
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空調系・電気設備系を含むサブコン業界の全体像を把握したい方は、こちらの記事で各社の売上・年収・企業特徴を詳しく比較できます。
3.【比較検討】業務用エアコンメーカーのシェアと製品の強み

業務用エアコンメーカーは、機器そのものの開発、製造、販売を行い、空調技術の進化をリードしています。以下の表は、市場シェアや知名度に基づく主要メーカーの概要です。
主要業務用エアコンメーカーの売上高・平均年収と詳細
| 順位 | 企業名 | 売上高(単体) | 平均年収 | 主な事業内容 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ダイキン工業 | 7,923億円 | 854万円 | 空調・冷凍機事業(世界トップクラス)、化学事業(フッ素化学) |
| 2位 | 三菱電機 | 2,070億円 | 869万円 | 総合電機メーカー。FA機器、社会インフラ、冷熱(空調・冷凍機)など |
| 3位 | 日立製作所 | 1,774億円 | 961万円 | IT、エネルギー、産業、モビリティ、ライフなど多角的な事業展開 |
| – | 日本キヤリア(東芝キヤリア) | – | – | 業務用・家庭用エアコン、冷凍・冷蔵機器の開発・製造・販売 |
1位 ダイキン工業

空調・冷凍機分野で世界的なシェアを持つリーディングカンパニーです。
家庭用から業務用、産業用まで、幅広い空調機器とシステムを提供しており、特にインバーター技術やVRV(ビル用マルチエアコン)などの先進技術に強みを持っています。
2位 三菱電機

FA機器、社会インフラ、電力システム、そして冷熱システム(空調・冷凍機)など、多岐にわたる事業を展開する総合電機メーカーです。
空調分野では、省エネ性能やセンサー技術を活用したインテリジェントな制御に定評があり、高品質な製品供給を通じて高いシェアを維持しています。
参考:三菱電機|有価証券報告書
3位 日立製作所

IT、エネルギー、産業、モビリティなど、多角的に事業を展開する総合電機大手です。
空調設備を含む「ライフ」セクターでは、ビルシステム全体を統合的に制御するソリューションに強みを発揮しています。大規模なインフラ事業との連携を推進し、環境と効率の両立を目指しています。
日本キヤリア(東芝キヤリア)

業務用・家庭用エアコンや冷凍・冷蔵機器の開発、製造、販売を手掛ける企業です。米国のキヤリア社との合弁事業を通じて、グローバル市場で事業を展開しています。
特定のメーカー系企業として、独自技術を活かした製品ラインナップと、充実したサポート体制が強みです。
4.空調設備会社の選び方|企業の健全性を評価する3つの観点
空調設備会社選びのチェックポイントと重要度
2024年問題への対応状況
人材育成と技術維持への投資状況
給与体系の安定性
売上高ランキングだけでは判断できない、発注先として長期的に信頼できる企業を見極めるための、労働法制とキャリア戦略の観点から導き出された客観的なチェックポイントを提示します。
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施工管理職への転職で企業選びに失敗しないためには、求人情報の見極め方を知っておくことが重要です。チェックすべきポイントを詳しく解説しています。
1. 2024年問題への具体的な対応状況
建設業界は、2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用され、働き方改革が加速しています。この法規制への取り組み姿勢は、企業の経営体質と現場管理能力を示します。
- チェックポイント
企業が「週休2日制の導入・推進」や「残業時間削減のためのDX推進」といった具体的な取り組みを公開しているかを確認します。 - 判断の理由
健全な労働環境の整備は、無理のない工期設定と適切な人員配置を前提とします。これは、結果として施工品質の安定と工期遅延リスクの低減につながります。
参考:厚生労働省|建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
2. 人材育成と技術維持への投資状況
企業の技術力は、属人的なスキルに依存するのではなく、組織全体で技術を維持・継承し、向上させる仕組みによって担保されます。
- チェックポイント
資格取得支援制度(費用の全額補助、資格手当の有無)や、実務研修制度が充実しているかを確認します。 - 判断の理由
労働者へのスキルアップ投資は、企業の未来の受注能力を高めるための戦略的支出です。人材育成に積極的な企業は、長期的な視野を持って経営を行っていると評価できます。
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3. 給与体系の安定性(月給制の採用状況)
雇用形態や給与体系は、従業員の安定的な生活を支える基盤であり、企業の技術者に対する評価姿勢を示します。
- チェックポイント
現場の技術者に対して「完全月給制」が適用されているかを確認します。 - 判断の理由
労働者の生活の安定を重視し、月給制を採用する企業は、高い定着率と技術の確実な継承が期待できます。これは、企業の安定した経営体質を裏付ける指標の一つです。
5.空調設備工事の費用相場と依頼時の注意点

空調設備工事の費用は、機器の容量、設置の難易度、および付帯するダクトや配管工事の規模により大きく変動します。適正な価格で発注するためには、相場観の把握と提案内容の精査が不可欠です。
費用相場を把握する(目安)
- 小規模な機器入替工事(中小店舗・オフィス):50万円~150万円程度
- 大規模ビルのフロア改修工事:数百万円~数千万円
費用相場の注意点
提示された金額の適正性を判断するためには、必ず機器本体の費用、設置工事費、電気工事費、配管・ダクト工事費といった内訳を詳細に確認することが必要
依頼時の注意点
相見積もりは最低2~3社から取得し、単に価格だけでなく、省エネ性能の改善提案や導入後のアフターメンテナンス体制を総合的に比較検討することが、長期的なコスト削減と安定運用につながります。
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6.空調設備工事会社の種類:メーカー系と独立系の違いを解説

空調設備工事会社は、メーカー系と独立系に大別され、それぞれに得意とする領域と強みがあります。
| 種類 | 特徴と強み | 適しているニーズ |
|---|---|---|
| メーカー系 | 特定メーカーの製品知識と技術に特化。純正品のメンテナンスや保証体制が強固 | 特定メーカーの導入が決定しており、長期保証と保守体制を重視する場合 |
| 独立系 | 複数のメーカーの機器を横断的に扱える。柔軟な機種選定と、幅広い技術ノウハウを持つ | コストパフォーマンスと、多様なメーカーの中から最適な機器を選定したい場合 |
空調設備工事会社:選択のポイント
- 中立的な視点からの提案を求める場合や、既存設備との連携を考慮する場合は、多様な製品を扱える独立系企業が選択肢となる
- 特定メーカー製品の安全性と長期サポートを優先する場合は、メーカー系企業が有力
7.ランキングと客観的指標で導く最適な空調設備会社の選び方
空調設備の選定において、単なるランキング順位は判断材料の一部に過ぎません。
真に信頼できる企業を選ぶには、売上高といった規模だけでなく「2024年問題への対応」「人材育成への投資」「安定した給与体系」といった、企業の経営姿勢と技術力の持続性を評価することが重要です。
本記事で提供した客観的データと選定基準を活用し、ニーズに最も合致した、長期的なパートナーシップを築ける一社を選び取るための指針としてください。主体的な情報分析こそが、失敗を回避する最善策です。
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