テレビドラマなどで描かれる、過酷な海で命を救うプロフェッショナルたち。そんな姿に憧れて「潜水士」という仕事に興味を持つ方は少なくありません。
しかし、現実の潜水士は、華やかな救助活動だけでなく、冷たい海の中で重機を操る建設作業や、学術的な調査など、多岐にわたるフィールドで活躍しています。
実は「潜水士」という名称は、単に潜る人を指すのではなく、労働安全衛生法に基づく国家資格(免許)を持つ者だけが名乗れます。
この記事では、潜水士資格の法的定義、試験の難易度、そして気になる「年収の実態」まで解説します。
- 国家資格「潜水士」と民間資格「Cカード」の明確な違いについて
- 実技試験がない理由と、合格率75%の試験を突破する勉強法について
- 平均年収453万円の裏にある「稼げる潜水士」の条件について
1.潜水士(国家資格)とは?Cカードとの決定的な違い

潜水士免許は「労働安全衛生法」という法律に基づいた国家資格になります。
この法律は、労働者の安全と健康を守ることを目的としており、潜水士免許も「水圧がかかる環境(高気圧作業)で働く人が、潜水病などの事故に遭わないための知識」を持っていることを国が証明するものです。
法的定義:労働安全衛生法に基づく「免許」である
潜水士免許は、労働安全衛生法第72条に基づき、潜水業務に従事する労働者に対して国が交付する「免許」です。
これは業務独占資格に近い性質を持っており、事業者は潜水士免許を持たない者を潜水作業に従事させてはならないと法律で定められています。

もし無資格で業務を行った場合、作業をさせた事業者だけでなく、作業を行った本人も6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金といった処罰の対象となります。
趣味のダイビングとは異なり、「仕事として水中に潜る」行為には、自身の命を守るための法的責任と義務が伴うことを、まずは理解しておきましょう。
国家資格「潜水士」vs 民間資格「Cカード」
一般的にダイビングライセンスと呼ばれる「Cカード」は、PADIなどの民間指導団体が発行する認定証であり、レジャーダイビングを楽しむためのものです。
一方、国家資格である「潜水士」は、労働災害防止を目的とした業務用の免許です。
両者の最大の違いは「法的拘束力」にあります。建設現場や調査業務などで潜る場合、Cカードを持っていても潜水士免許がなければ違法就労です。

逆に、沖縄県などの一部自治体では、レジャーダイビングのインストラクターであっても、労働者として潜水する以上は安全管理の知識が必要であるとして、条例等で潜水士免許の取得を義務付けているケースもあります。
プロを目指すなら、両方の取得が事実上のスタンダードと言えるでしょう。
なぜ「実技試験」がないのか?その理由とリスク
「潜水士試験には実技がなく、泳げなくても合格できる」というのは事実です。
しかし、これには明確な理由があります。
潜水士免許の目的は、個人の泳力を測ることではなく、「高気圧障害(潜水病)や溺水事故などの労働災害を防ぐための知識」を担保することにあるからです。
業務としての潜水には、背中にタンクを背負うスクーバ式だけでなく、船上からホースで空気を送る送気式(フーカーやヘルメット潜水)など多様な方法があり、操作技術は全く異なります。

そのため、国はすべての潜水業務に共通する物理学的・医学的な安全知識のみを試験し、個別の潜水技術については、就職後の現場(OJT)や専門の養成機関で習得させるという役割分担をしています。
免許取得はゴールではなく、「安全に訓練を受けるための基礎知識を得た」スタートラインに過ぎないことを忘れてはいけません。
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2.潜水士の仕事内容と活躍フィールド
海での仕事4選
港湾土木・建設 海のインフラを支える力仕事
サルベージ・海難救助 沈没船引揚げのプロフェッショナル
公務員ダイバー 海上保安庁・警察・消防
インストラクター・調査研究 海を知り、伝える仕事
潜水士の活躍の場は、海の中だけではありません。
専門性によって大きく4つのフィールドに分かれます。
港湾土木・建設(海のインフラを支える力仕事)

潜水士の資格を活かせる職場で最も多いのが、港湾土木や海洋建設の現場です。
防波堤の築造、橋脚の基礎工事、海底ケーブルの敷設やメンテナンスなど、陸上の建設業と同様の作業を水中で行います。
現場は美しい海とは限りません。
視界がほとんどない濁った海や、強い潮流の中、数十キロの重りを背負って水中溶接やコンクリート打設を行うことも日常茶飯事です。

潜水技術だけでなく、玉掛けや溶接、土木施工管理技士などの建設系資格も求められる、「水中のガテン系」とも呼べるタフな仕事ですが、日本のインフラを底から支えるやりがいのある仕事です。
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建設業界には潜水士以外にも未経験から挑戦できる職種が多数あります。施工管理は資格なしでもスタート可能で、キャリアアップの道筋も明確です。
サルベージ・海難救助(沈没船引揚げのプロフェッショナル)

サルベージとは、海難事故で沈没や座礁した船舶の救助、引揚げ、積荷の回収などを行う特殊な業務です。
時には油流出を防ぐための防除作業や、遺失物の捜索なども行います。
事故はいつ起きるか予測できないため、緊急出動が求められることも多く、現場の状況も毎回異なります。
二次災害を防ぎながら迅速に作業を進めるための高度な判断力とチームワーク、そして強靭な精神力が不可欠です。

危険が伴うため、高度な専門技術を持つ限られたサルベージ会社の潜水士だけが担当できる、エキスパートの世界です。
公務員ダイバー(海上保安庁・警察・消防)

人命救助を主たる任務とする「公務員ダイバー」も潜水士の代表的な活躍の場です。
海上保安庁の潜水士や、警察の機動隊水難救助部隊、消防の水難救助隊などが該当します。
ただし、これらは「潜水士として採用される」わけではありません。
まずは海上保安官や警察官、消防士として採用され、その後の厳しい選抜試験と過酷な訓練課程を突破した者だけが選ばれるエリートコースです。

潜水士免許は必須要件の一部に過ぎず、圧倒的な泳力と体力が前提となるため、目指すには早期からのトレーニングが必要になります。
インストラクター・調査研究(海を知り、伝える仕事)

レジャーダイビングショップでお客さんをガイドするインストラクターや、大学や研究機関での海洋生物調査、水族館での水槽清掃やショー出演なども潜水士の仕事です。
特にインストラクターは「遊び」を提供する仕事ですが、お客様の命を預かる責任者であるため、法的根拠として潜水士免許の所持が強く推奨(地域によっては義務化)されています。

また、海洋調査では、サンプルの採取や観測機器の設置など、研究者をサポートするための正確な潜水スキルと科学的な知識が求められます。
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3.潜水士の年収・給料のリアル【データvs現場の声】

「潜水士は稼げる」という噂は本当なのでしょうか?厚生労働省のデータと現場の実情を照らし合わせると、その構造が見えてきます。
データで見る平均年収は約453万円の「裏側」
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、潜水士の平均年収は453万4,000円となっています。命がけの仕事の対価としては少なく感じるかもしれません。
しかし、この数字には統計上のバイアスがあります。
潜水士は体力を要する仕事のため20代〜30代の若年層が労働人口の多くを占めていることや、給与体系が年功序列型の公務員、季節変動のあるインストラクターなどもデータに含まれているため、全体の平均が押し下げられているのです。
民間企業で専門技術を持つ熟練潜水士の年収は、この平均値を大きく上回るケースが多々あります。
年収1000万円を超える「飽和潜水」と危険手当
民間企業の潜水士において、年収1000万円を超えるプレイヤーが存在するのは事実です。
その鍵を握るのが「飽和潜水(Saturation Diving)」という特殊技術と、それに伴う危険手当になります。
飽和潜水とは、水深100m以深の深海で作業するために、ヘリウム混合ガスを用いて体内にガスを飽和させ、加圧チャンバー内で何週間も生活しながら作業を行う技術です。
世界でも限られた技術者しか行えないため、日当だけで数万円〜十数万円の手当が加算されることがあり、一つのプロジェクトで一般的なサラリーマンの年収分を稼ぐことも可能になります。
高収入は、命のリスクと高度な専門性への対価です。
年齢別・経験別の年収シミュレーション
一般的な民間潜水会社(港湾土木・サルベージ)でのキャリアパスと年収イメージは以下のようになります。
実力主義の世界であり、できる作業が増えれば収入も上がります。
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年齢を重ねてからのキャリアチェンジに不安を感じる方も多いでしょう。40代からでも建設業界への転職は可能で、むしろ人手不足の今が好機です。
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4.潜水士試験の難易度と独学合格への道

潜水士試験は、学歴や年齢に関係なく誰でも受験することができます。
では、その難易度はどの程度なのでしょうか。
最新合格率は70%台へ低下中。難化の傾向
かつて潜水士試験は「合格率80%超えの簡単な国家資格」と言われていました。
しかし、令和6年度のデータでは72.7%まで低下しており、難化傾向にあります。

これは、近年の安全意識の高まりを受け、試験問題が単なる過去問の焼き直しから、より深い理解を問う内容へと変化しているといえるでしょう。
「過去問を丸暗記すれば一夜漬けでも受かる」という古い情報を信じていると、足元をすくわれることになります。
4つの試験科目と鬼門となる「計算問題」
試験は全4科目、五肢択一式のマークシート方式で行われます。
- 潜水業務(10問):潜水器具の種類や水中での合図、救急処置など実務的な知識。
- 送気、潜降及び浮上(10問):空気の消費量や浮上速度、潜水時間の管理など。
- 高気圧障害(10問):減圧症や窒素酔い、酸素中毒などの医学的メカニズム。
- 関係法令(10問):高気圧作業安全衛生規則などの法律知識。
特に受験生を苦しめるのが第2科目の計算問題です。
「ボイル・シャルルの法則(圧力と体積の関係)」を用いて、水深に応じた空気消費量や浮上時間を計算する必要があります。
物理が苦手な方には鬼門ですが、出題パターンは限られているため、公式を理解して演習を繰り返せば得点源になります。
独学vs通信講座?「過去問」中心の学習戦略
潜水士試験は、独学でも十分に合格が可能です。
むしろ、大手通信講座での取り扱いが少ないため、市販のテキストと過去問題集を使って独学するスタイルが一般的になります。
学習のポイントは、「過去問ファースト」です。

まずは過去問を解いてみて、どのような問題が出るのか、どの計算式が必要なのかを把握してから、テキストで理屈を確認する「逆算」の勉強法が効率的です。
安全衛生技術試験協会の公表問題や、市販の過去問集(直近5年分程度)を繰り返し解き、計算問題に慣れておくことといいでしょう。
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潜水士以外にも、建設業界でキャリアアップに役立つ国家資格は多数存在します。施工管理技士など、人手不足の今こそ取得のチャンスです。
5.潜水士になるには?資格取得後のキャリアパス

資格を取得した後、プロの潜水士として働くためにはどのようなルートがあるのでしょうか。
資格だけでは潜れない?就職後の訓練(OJT)の重要性
繰り返しになりますが、潜水士免許試験には実技がありません。
そのため、免許を取った直後は「知識はあるが潜れない」状態です。

一般的なキャリアパスとしては、港湾建設会社やサルベージ会社に就職し、先輩社員の指導のもとで現場研修(OJT)を受けます。
最初は陸上でダイバーに空気を送るホースの管理(テンダー業務)や機材の準備などの下積みを経験し、徐々に浅い場所での潜水作業を任されるようになります。
一人前の潜水士になるまでには数年の現場経験が必要です。
ダイビングスクールに通うべきタイミング
未経験から潜水士を目指す場合、就職活動の前段階として、民間のダイビングスクールでCカード(オープンウォーターなど)を取得しておくことも有効な戦略です。
もちろん、現場での潜水とは勝手が違いますが、水中の感覚や圧力変化への対応、基本的な機材の扱いに慣れておくことは大きなアドバンテージになります。
また、面接時に「海で働くための準備をしている」という熱意のアピールにも繋がります。

ただし、レジャーと業務潜水は目的もルールも異なるため、就職後は現場のやり方に従う柔軟な姿勢が大切です。
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潜水士が活躍する建設業界全体の将来性も気になるところです。2024年問題やDX化の波が、業界にどのような影響を与えるのか詳しく解説しています。
6.よくある質問(FAQ)

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泳げなくても資格は取れますか?
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はい、取れます。
潜水士免許試験は筆記試験のみで行われるため、泳力や体力測定はありません。
しかし、それはあくまで「資格取得」の話です。
実際の現場では、重い機材を背負って作業したり、緊急時に自分や仲間の命を守ったりするために、高い泳力と体力が必須となります。
そのため、就職後に企業の研修などで水泳訓練が行われることが一般的です。
プロを目指すなら、資格勉強と並行して基礎体力をつけておくことをお勧めします。
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阿部亮平(Snow Man)さんも持っているって本当?
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はい、Snow Manの阿部亮平さんは、気象予報士などの難関資格と共に、潜水士の国家資格も取得されています。
多忙なアイドル活動の合間を縫っての合格は、効率的な学習の成果と言えるでしょう。
また、岩本照さんも同時に取得されています。
このように、芸能人が教養やスキルアップの一環として、あるいは番組の企画で取得するケースも見られ、近年では「知的な国家資格」としても注目を集めています。
ファンの方が「推しと同じ資格を取りたい」と受験するケースも増えているようです。
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女性でも潜水士になれますか?
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もちろんなれます。性別による受験制限はありません。
確かに、港湾土木や海上保安庁などの現場は体力勝負の側面が強く、男性が多い職場環境ではあります。
しかし、ダイビングインストラクターや水族館の飼育員、海洋調査・研究機関などの分野では、多くの女性潜水士が活躍しています。
女性ならではのきめ細やかな視点やコミュニケーション能力が活かせるフィールドも広がっており、性別に関わらずプロフェッショナルとして活躍できる資格です。
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7.潜水士免許は海への「パスポート」であり、プロへのスタートライン
潜水士の資格は、海という過酷な環境で働くための「安全の知識」を国が証明するものです。
試験に実技はありませんが、それは決して「簡単だから」ではなく、現場で学ぶべき技術の土台となる「命を守る理論」を叩き込むためです。
合格率がやや低下傾向にある今こそ、しっかりとした対策を行い、一生有効な国家資格を手に入れてみてはいかがでしょうか。
それは、海のプロフェッショナルとして活躍するためのパスポートとなるはずです。
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建設業界で活躍する女性は年々増加しています。施工管理の分野でも、女性ならではの強みを活かして成功するケースが増えています。