「新卒1年目で現場監督を辞めたい」と感じることは、決して珍しいことではありません。しかし、多くの若手技術者が「こんなに早く辞めるのは甘えではないか」と自身を責めてしまいがちです。
建設業界には他業界とは異なる独特のキャリア構造があり、労働時間や教育体制の課題も依然として存在します。
今の状況を正しく判断し、後悔のない選択をするためには、精神論ではなく客観的なデータに基づいて業界の実態を整理することが不可欠です。
- 新卒で辞めたくなる理由は、個人の問題ではなく業界構造にもある
- 建設業のキャリアにある独特のしくみ
- 辞める・続ける、それぞれの選択肢と行動の考え方
1.現場監督を新卒1年で「辞めたい」と感じる、よくある理由
新卒現場監督が辞めたいと感じる4大理由
長時間労働と少ない休日
上下関係や職人との人間関係
「見て覚えろ」という放置(研修不足)
覚えることの多さと責任の重さ
新卒で現場監督として働き始めた多くの方が、理想と現実のギャップに悩みます。感じ方は人それぞれですが、建設業界には共通するいくつかの理由があります。
長時間労働と少ない休日
⚠️ 2024年問題:時間外労働の上限規制
原則的な上限(月)
45 時間
原則的な上限(年)
360 時間
※ 2024年4月1日より、罰則付きの上限規制が適用されています。
建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。それ以前は「36協定」の適用除外業種だったため、工期を守るために長時間労働が当たり前になっていた企業も少なくありません。
とくに現場監督(施工管理)は、現場の朝礼から現場に入り、日中は各所を回ります。夕方以降は事務所で書類作成や翌日の段取りを行うことも多く、どうしても拘束時間が長くなりやすいです。
上下関係や職人との人間関係
建設現場は、元請けの社員、協力会社のスタッフ、さまざまな専門分野の職人など、多くの人が関わって成り立っています。
とくに新卒の現場監督は、年上で経験豊富な職人に指示を出したり、協力をお願いしたりする必要があります。

その中で、厳しく叱られたり、昔ながらの慣習に戸惑ったりすることもあります。こうした人間関係のストレスが、大きな負担になるケースも少なくありません。
「見て覚えろ」という放置(研修不足)
人手不足が続く現場では、体系的なOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や研修を行う時間が取れないことがあります。
その結果、「現場で見て覚えろ」という形の指導、あるいは実質的な放置になってしまうケースもあります。

新卒のうちは、何が正解かわからないまま仕事を進めることも多く、小さなミスを厳しく指摘されて萎縮してしまうなど、そんな悪循環に陥る方も少なくありません。
覚えることの多さと責任の重さ
施工管理の仕事は、工程・品質・原価・安全という「4大管理」を担います。新卒であっても、任された工区については大きな責任があります。
専門用語や法律、図面の読み方、資材の発注、役所への提出書類など、覚えることがとても多いです。

一つのミスが事故や大きな手戻りにつながることもあり、精神的なプレッシャーを感じやすい仕事です。
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現場監督の仕事がきつい理由や、現場特有のストレス要因について詳しく知りたい方は、こちらの記事で業界構造や具体的な対処法を解説しています。
2.新卒で辞めるのは「甘え」?客観データで見る建設業の実態

「辞めたい」と感じる理由が、ここまで紹介したような内容であっても、新卒1年目の立場では「自分の努力不足だ」と抱え込みやすいものです。
しかし、公的なデータを見ると、それが必ずしも個人の「甘え」や「忍耐力」の問題だけではないことがわかります。
データ1:新卒3年以内の高い離職率
新規高卒就職者の産業別・3年以内離職率
(令和4年3月卒業者)
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
厚生労働省の調査によると、建設業における新規高卒就職者の3年以内離職率は、ほかの主要産業と比べても高い水準にあります。年度によって変動しますが、4割を超えることもあります。
つまり、多くの新卒者がキャリアの初期段階でつまずき、業界を離れているという客観的な事実を示しています。
参考|厚生労働省:新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)
データ2:全産業平均より長い労働時間
月間実労働時間の比較
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、建設業の月間実労働時間は、全産業の平均と比べて長い傾向が続いています。
つまり、「休日が少ない」「残業が多い」と感じるのは、個人の思い込みではなく、業界全体のデータが裏付けられている現実です。
参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 2025(令和7)年11月分結果確報
結論:個人の忍耐力ではなく「業界の構造」の問題
これらのデータが示しているのは、「新卒が辞めやすい」のは、個人の忍耐力の問題だけではない、ということです。
長時間労働になりやすい業務構造や、若手が定着しにくい職場環境など、業界のそのものが抱える「構造的な課題」が背景にある可能性が高いのです。
「辞めたい」と感じるのは、その構造に直面した自然な反応ともいえます。
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3.キャリアの分岐点:有資格者と無資格者の「二重構造」

「建設業にはもう希望がないのでは?」そう感じる人もいるかもしれません。しかし、ここで知っておくべき大切なポイントがあります。それが、建設業界のキャリアパスに存在する「二重構造」です。
事実:資格を取ると離職率は「激減」する
建設業の離職率:経験・資格による違い
出典:
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
前述のとおり、新卒(無資格者)の離職率は約30~40%と高い水準にあります。
一方で、業界調査によると、「1級・2級施工管理技士」といった国家資格を持つ技術者の離職率は、約10%程度です。むしろほかの産業よりも低い水準になっています。

つまり、建設業のキャリアは、「無資格の新卒時代」と「国家資格を取得した後」とで、安定性や定着率が異なるのです。
参考|
厚生労働省:新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)
厚生労働省:令和5年雇用動向調査結果の概況
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施工管理技士補の資格取得について、2級なら17歳から受験可能で、キャリアの早期安定化に有効です。取得メリットや試験内容を詳しく解説しています。
意味:キャリアの「魔の期間」は資格取得まで
このギャップが意味することは何でしょうか。施工管理技士などの国家資格は、受験資格として一定期間の「実務経験」が必要です。
新卒で入社してから受験資格を得て、難関試験を突破するまでの数年間、労働環境的にも精神的にも厳しく、離職が集中しやすい時期なのです。
しかし、この期間を乗り越えて資格を取得すると、キャリアは安定してきます。
資格取得でキャリアが安定する4つの理由
資格手当が付き、給料が上がる
「監理技術者」など、法律で認められた専門家として扱われる
公共工事の入札(経営事項審査)で企業の評価を高める人材になる
転職市場での価値が上がり、より条件のいい会社を選べるようになる
判断軸:「続ける(資格を目指す)」か「辞める(他業種へ)」か
この「二重構造」の事実を踏まえると、選択肢は単なる「辞めるか、我慢するか」の二択ではありません。
キャリアの分岐点:2つの選択肢
選択肢A:他業種へ
この「魔の期間」の厳しさは受け入れがたいと判断し、早めに他業種へキャリアチェンジする。
選択肢B:資格取得を目指す
今は厳しくとも、数年後の資格取得によるキャリア安定を見据えて、戦略的に「続ける」道を選ぶ。
どちらが正解かは、個人の価値観や適性によって異なります。
大切なのは、この構造を理解した上で、自分の将来像に合った判断をすることです。
4.選択肢1:「辞める」場合の転職先と活かせるスキル

「選択肢A」を選び、早めに他業種へ移ることは、決して逃げ道ではなく合理的なキャリア判断のひとつです。
現場監督としての経験は、たとえ数年であっても、他業種で高く評価される「ポータブルスキル」が多く身についています。
活かせる経験(ポータブルスキル)とは
現場監督として培ったスキルは、他業種でも高く評価される「ポータブルスキル」です。具体的には、次のような経験が挙げられます。
活かせる経験(ポータブルスキル)とは
プロジェクト管理能力(工程管理)
多くの関係者を巻き込み、工期から逆算してタスクを管理した経験。
対人折衝能力(人間関係)
年齢や立場の異なる人々と交渉し、協力を引き出した経験。
コスト意識(原価管理)
限られた予算の中で品質を確保するために工夫した経験。
タフさ(ストレス耐性)
厳しい環境の中でも責任を果たし、粘り強く業務に取り組んだ経験。
具体的な転職先の例
施工管理として培った経験は、以下のような職種で活かすことができます。
具体的な転職先の例
公務員(技術職)
自治体や官公庁で、発注者側として工事の計画や監督を行う仕事です。労働環境が安定しやすく、ワークライフバランスを重視する人に向いています。
デベロッパー(不動産開発)
発注者側の立場でプロジェクト全体を企画・推進する職種です。建設会社とは逆の立場で、企画力や調整力が活かせます。
ファシリティマネジメント
オフィスビルや商業施設などの維持管理・運営を行う仕事です。現場経験を基に、より計画的・管理的な業務に携われます。
IT業界(PM職など)
ITシステムの開発も「納期・品質・コスト」の管理が求められます。スケジュール調整や進行管理のスキルが高く評価されます。
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5.選択肢2:「続ける」場合に確認すべきこと

「選択肢B」を選び、資格取得を目指してキャリアを「続ける」場合、大切なのは「どの会社で続けるか」です。
新卒を使い捨てるのではなく、プロに育てる意志のある「優良な企業」であるかを見極める必要があります。
会社の「資格取得支援制度」は整っているか
企業が社員の資格取得をどれだけ支援しているかは、人材育成への本気度を測るバロメーターです。たとえば、次のような制度があるか確認してみましょう。
・社内での勉強会やサポート体制はあるのか
・受験費用や講習費用の補助はあるのか
・資格取得者に「資格手当」は支給されるのか
これらのしくみが充実している会社は、社員の成長を「会社の資産」と考えている可能性が高いです。
働き方改革(週休2日など)が進んでいるか
資格取得を目指すには、勉強に充てる時間の確保が欠かせません。しかし、日々の業務に追われ、休日もほとんど取れない環境では、勉強どころではなくなってしまいます。
そこで目指したいのが、次のような取り組みです。
・国土交通省が推進する「週休2日制モデル工事」に積極的に取り組んでいるか
・i-Construction(ICT技術の導入)などで、業務効率化を進めているか
こうした改善を進めている企業は、社員が長期的に働ける環境=「資格を学び、定着する環境」を整えようとする姿勢があるといえます。
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施工管理技士などの国家資格取得を目指すなら、サポート体制が整った環境が重要です。カラフルスタッフィング建設では、資格取得支援制度が充実した派遣先をご紹介。週休2日制の現場も多数あり、勉強時間を確保しながらキャリアアップを目指せます。
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6.円満に退職するための「法律」と「進め方」

もし「辞める」という決断をした場合、法的な知識を持って計画的に進めることが大切です。正しい手順で進めることが、現職とのトラブルを防ぎ、次のキャリアへスムーズに移るためには欠かせません。
退職の意思はいつ、誰に伝えるべきか
法律(民法)では、退職の意思表示は退職予定の2週間前までに行えば有効とされています。ただし、現場の引継ぎやスケジュール調整を考慮すると、1~3ヶ月前に伝えるのが実務上のマナーです。
まずはいきなり人事部や役員に伝えるのではなく、直属の上司に口頭で相談することから始めましょう。

指揮命令系統を飛ばしてしまうと、誤解やトラブルの原因になるおそれがあるので注意しましょう。
参考|
e-Gov:民法第627条第1項
労働基準監督署:退職の申出は2週間前までに
「退職届」と「退職願」の違い
「退職願」と「退職届」の違い
退職願
「退職したく思います」という、会社との合意を前提とした「お願い」です。会社が承諾するまでは撤回できる可能性があります。
合意前提・撤回可能
退職届
「退職します」という、一方的な「通告」です。原則として撤回できません。
一方的な通告・撤回不可
円満に辞めたい場合は、まずは「退職願」を提出(または口頭で相談)して退職日を決め、その後に会社のルールに従って「退職届」を提出するのが一般的です。
雇用保険(失業保険)の手続きで必要なこと
退職後、次の仕事が決まるまでの生活を支えるのが雇用保険(失業保険)です。
この手続きで欠かせないのが「離職票」です。離職票は、退職した会社が発行する書類で、退職後10日~2週間程度で自宅に届くのが一般的です。

もし会社がなかなか発行してくれない場合は、ハローワークに相談すれば発行を促してもらうこともできます。
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7.まとめ:「甘え」ではない。新卒現場監督のキャリア分岐点
新卒で現場監督を「辞める」という選択は、決して甘えではありません。背景には、長時間労働や教育体制の不備といった業界特有の構造的問題が深く関わっているからです。
大切なのは、この期間を乗り越えて国家資格による安定を目指すか、培った管理能力を武器に他業種へ転じるかを、冷静に判断することです。
どちらの道を選んでも、それは将来のための戦略的な決断となります。自身の価値観と向き合い、後悔のない一歩を踏み出してください。
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