建築士の仕事に興味がある方や、現在キャリアアップを考えている方にとって、「年収」はご自身の将来設計に関わる大切なテーマです。
「建築士の平均年収は、日本の平均と比べて高い?」
「一級建築士と二級建築士では、どれくらいの差があるの?」
といった点が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、一級・二級建築士の資格別・年齢別・企業規模別の年収差や、年収1,000万円を目指すための道のりについて紹介します。
- 一級・二級建築士の資格別、年齢別、企業規模別のリアルな年収差
- 公的データに基づく建築士の最新の平均年収
- 建築士として年収1,000万円を実現するための具体的なキャリアパス
1.まずは結論:建築士の平均年収は641.6万円【日本の平均より高い】
建築士と日本の平均年収
厚生労働省や国税庁のデータを参考にすると、建築士の年収は、日本全体の平均よりも高い水準にあることがわかります。
建築は、人々の生命や財産を守るという極めて重要な役割を担う仕事です。その設計や工事監理には専門知識と技術、そして国家資格が求められます。

この「専門性の高さ」と「社会的責任の重さ」が、平均年収に反映されていると言えるでしょう。
ただし、この「平均年収」はあくまで全体の平均値です。実際の手取り額は、ここから社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)や税金(所得税、住民税)が差し引かれた金額になります。
そして最も重要な点は、建築士の年収は「全員が同じ」ではなく、次に解説する「資格」「年齢」「企業規模」といった様々な要因によって、大きな幅があるということです。
参考|job tag(厚生労働省):建築設計技術者、国税庁:令和6年分 民間給与実態統計調査
2.【資格別】一級・二級・木造建築士の年収の違い
建築士の年収を左右する最大の要因は、保有している「資格の種類」です。
建築士の資格は、主に「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の3つに分かれており、それぞれ扱える建物の規模や構造に法律上の制限があります。
一般的に、年収の水準は以下の順になる傾向があります。
資格で変わる「仕事の範囲」と「年収の傾向」
一級建築士
仕事の範囲: 制限なし(高層ビル・大規模施設など)
二級建築士
仕事の範囲: 一定規模まで(戸建て住宅が中心)
木造建築士
仕事の範囲: 小規模な木造のみ(専門分野)
なぜこれほど明確な差が生まれるのでしょうか。
それは、資格によって「できる仕事の範囲」が大きく異なるためです。
| 資格 | 扱える業務の範囲(設計・工事監理) |
|---|---|
| 一級建築士 | ・扱える建物の規模や用途に制限なし ・高層ビル、大規模な商業施設、病院、学校など、あらゆる建築物の設計・工事監理が可能 |
| 二級建築士 | ・一定規模以下の木造建築物や、延べ面積が比較的小さい鉄筋コンクリート造の建物などに限定 ・主に戸建て住宅の設計・監理を担う |
| 木造建築士 | ・二級建築士よりもさらに範囲が限定 ・小規模な木造建築物のみを扱える |
一級建築士の資格がなければ、スーパーゼネコンなどが手がけるような大規模プロジェクト(=高額なプロジェクト)に携わることができません。
また、企業にとっても、一級建築士の保有者は公共工事の入札(経審)で加点対象となるため 、価値の高い人材です。
こうした業務範囲の広さ、扱えるプロジェクトの規模、そして企業からの需要の高さが、そのまま年収の差となって表れます。
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建設業界で高収入を目指すなら、施工管理の資格取得も有力な選択肢です。一級建築施工管理技士なら年収アップとキャリアの幅が広がります。
3.【要因別】建築士の年収が決まる5つの要素
【要因別】建築士の年収が決まる5つの要素
1 年齢と経験年数(年収カーブ)
2 企業規模(スーパーゼネコン・大手・中小)
3 性別(男性・女性)
4 地域・都道府県
5 雇用形態(正社員・派遣・独立)
資格以外にも、年収を決定づける重要な要因が5つあります。
ご自身の状況や、目指すキャリアを当てはめながら確認してみてください。
1)年齢と経験年数(年収カーブ)
建築士の年収は、他の多くの専門職と同様に、年齢と経験年数に応じて上昇していく傾向が顕著です。
政府統計(e-Stat)の「賃金構造基本統計調査」を年代別に見ると、経験の浅い20代では比較的低い年収水準からスタートしますが、30代、40代になるにつれて着実に上昇していきます。
特に、チームを率いるプロジェクトマネージャーや管理職のポジションに就く50代で年収のピークを迎えるケースが多く見られます。
これは、長年の実務経験とマネジメント能力が最も高く評価される時期だからです。
参考|e-Stat(政府統計の総合窓口):賃金構造基本統計調査
2)企業規模(スーパーゼネコン・大手・中小)
所属する企業の規模は、年収に大きな影響を与えます。
- スーパーゼネコン・大手組織設計事務所:大規模プロジェクトを安定的に受注しており、給与水準そのものが高く設定されています。また、福利厚生や賞与(ボーナス)も手厚い傾向があります。
- 中小の設計事務所・工務店:地域密着型の案件や、個別の住宅設計などを主に手がけます。年収は大手企業に比べると低くなる傾向がありますが、裁量が大きく、幅広い業務を経験できるという側面もあります。
特に「一級建築士」の資格を持つ場合、その価値を最大限に発揮できるのは、大規模プロジェクトを扱う大手企業だと言えるでしょう。
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3)性別(男性・女性)
残念ながら、現状の統計データでは、建築業界全体として男性の平均年収が女性を上回る傾向が見られます。
これは、業界全体としてまだ男性比率が高いことや、管理職に占める男性の割合が高いこと、また、女性が出産・育児といったライフイベントで一時的にキャリアを中断するケースがあることなどが背景にあると考えられます。
しかし、近年は「2024年問題」 と呼ばれる働き方改革(時間外労働の上限規制)が適用され、週休2日制の導入が強く推進されています。
これにより、性別に関わらず、すべての人が長く働きやすい環境づくりが進んでおり、女性の建築士が活躍する場は確実に広がっています。
4)地域・都道府県
勤務する地域によっても、年収には差が生じます。
一般的に、大規模な建設プロジェクトが集中する首都圏(東京・神奈川など)や大都市圏(大阪・愛知・福岡など)は、その他の地域に比べて平均年収が高い傾向です。
これは、物価や家賃の水準が高いことに加え、大手企業の本社や大規模案件が集中しているためです。
5)雇用形態(正社員・派遣・独立)
雇用形態も年収を左右します。
正社員
月給制で安定した収入と賞与、福利厚生が期待できます。
派遣社員
時給制で働くケースが多く、繁忙期などに高い時給で働くことも可能ですが、賞与や昇給は限定的です。
独立・開業(自営業)
収入は青天井ですが、安定はしません。
大規模な案件を受注したり、設計料が高く評価されたりすれば、会社員時代をはるかに超える収入を得ることも可能です。
■建築士資格を活かして年収アップを目指すなら
建築士の資格を持ちながら、さらに施工管理の実務経験を積むことで、キャリアの選択肢が大きく広がります。カラフルスタッフィング建設では、一級・二級建築士の資格保有者向けに、正社員待遇の施工管理派遣案件を多数ご用意しています。月給60万円以上、賞与ありの高待遇案件で、あなたの専門性を最大限に活かしませんか。
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4.建築士で年収1,000万円・2,000万円は実現可能か?

「建築士として年収1,000万円を目指す」というのは、決して夢ではありません。
ただし、そこにたどり着くには、着実にステップを踏むことが大切です。
キャリアの進め方は、大きく2つの道に分けられます。
大手企業(スーパーゼネコン等)でキャリアを積む
安定した収入を目指すうえで、現実的な道のひとつが「一級建築士」の資格を取得し、スーパーゼネコンや大手設計事務所、大手ハウスメーカーなどで経験を重ねることです。
こうした企業では、もともとの給与水準が高く、待遇や福利厚生もしっかり整っています。
現場での経験を積みながら「プロジェクトマネージャー」や「設計部長」といった管理職へキャリアアップしていくことで、年収1,000万円を超えることも少なくありません。

さらに役員クラスまで昇進すれば、年収2,000万円以上を目指すことも可能です。
独立・開業して成功する
もう一つの道は、独立・開業です。
中小の設計事務所などで経験を積んだあと、あるいは大手から独立して、自身の設計事務所を立ち上げるというキャリアパスです。
独立後の収入は、手がける仕事の規模やクライアントとのつながりによって大きく変わります。
自分のデザインが評価されて仕事の幅が広がったり、大型案件を任されるようになれば、数千万円規模の収入を得るチャンスも十分あります。

ただし、これは競争が激しく、リスクも伴う道です。設計スキルだけでなく、営業力や経営能力も同時に求められます。
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5.【データで見る】建築士業界の現状と将来性

年収と同様に重要なのが、業界の将来性です。結論から言えば、建築士業界、特に若手には大きなチャンスがあります。
その根拠を3つの具体的な「数値」から解説します。
1)高齢化の「数値」:60代以上が約4割
一級建築士の年齢構成の傾向
60代以上の割合(高齢化)
若手のなり手(減少傾向)
国土交通省のデータによると、建築士の登録人数は、特に一級建築士において高齢化が進んでいる傾向があります。
一方で、若手のなり手は減少傾向にあります。
これは裏を返せば、これから資格を取得する若い世代にとっては、将来的に活躍できるチャンスが大きいとも言えます。

専門的な知識と技術を持つ建築士は、これからの時代にますます求められるようになるでしょう。
参考|スタディング講座:一級建築士の人数はどのぐらい?推移や年齢別・男女別データ、事務所数を調査
2)「2024年問題」と働き方改革の進展
建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる「2024年問題」が大きな転換点となっています。
これをきっかけに、長時間労働の見直しや週休2日制の導入が業界全体で進められています。
かつては“きつい”という印象が強かった建設業界も、いまでは性別や年齢を問わず、安心して長く働ける環境づくりが進んでいます。
将来のキャリアを考えるうえでも、こうした変化は前向きな流れと言えるでしょう。
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3)技術革新(BIM/DX)による需要の変化
建設業界でも、デジタル化(DX)の波が急速に広がっています。
なかでも注目されているのが『BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)』です。
このBIMを使いこなせる建築士の需要は年々高まっており、こうした新しい技術を身につけることが、将来の年収アップにもつながっています。
4. 建築士試験の難易度と資格の価値
人手不足や技術の進歩が進む今でも、建築士という資格の「価値」は変わることがありません。その根拠が、試験の難易度の高さです。
建築士の資格の中でも、特に一級建築士の試験は、国内でも難関の国家資格として知られています。
令和6年 一級建築士試験 合格率
学科の試験
設計製図試験
最終的な総合合格率
結果にある通り、この試験の難易度の高さが資格の希少性と価値を担保しており、高い年収水準の根拠ともなっています。
■建築士のキャリアを施工管理で広げる選択肢
高齢化が進む建築士業界では、若手の専門人材が求められています。建築士の知識と施工管理の実務経験を組み合わせることで、市場価値はさらに高まります。カラフルスタッフィング建設なら、正社員待遇で安定した収入を得ながら、大手ゼネコンやサブコンの大規模プロジェクトに参画できます。充実した研修制度で未経験からのステップアップも可能です。
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6.建築士として年収1,000万円を目指すキャリア戦略
建築士の年収は、日本の平均給与よりも高い水準にありますが、その額は資格、年齢、企業規模、地域など多くの要因によって大きく変動します。
重要なのは、これらの事実を理解した上で、ご自身がどのようなキャリアを歩みたいかを設計することです。
年収1,000万円という目標は、最難関である「一級建築士」の資格を取得し、大手企業で管理職を目指す、あるいは独立開業して成功を収めるといった、明確なキャリア戦略と努力によって実現可能性が高まります。